「便所サンダル」って分かりますか? そう、居酒屋のトイレで見かけるあのサンダルです。そんなサンダルに焦点を当てた「ベンサンフェア」を1カ月にわたって開催している銭湯が大津市にあります。なぜ、そんなことをしているのか店主の男性に聞きました。
銭湯は大津市の住宅街にある「都湯」(馬場3丁目)です。都湯は1970年の創業で、2016年に当時の店主が亡くなって以降、休業していましたが、京都や滋賀で4軒の銭湯を経営する湊雄祐さんが2018年に経営を引き継ぎました。現在は湊さんから経営を任されている原俊樹さん(35)が店主として都湯を営んでいます。
原さんは、若い人たちにも銭湯を利用してもらおうとユーチューブに独自のチャンネル「ゆとなみTV」を開設し、都湯の魅力や催し情報を発信しています。ゆとなみTVで2019年の年末に取り上げたのが、サンダルです。
原さんは、かまにまきをくべに行くとき、また、浴室内で作業するときに、サンダルが重宝するとユーチューブの動画で紹介。1年間の感謝を込めて「はらとしき賞」をサンダルに贈ると動画内で発表しました。
すると、動画を見た奈良県の履物卸業者から「サンダル工場の見学をしないか」とのお誘いがありました。工場では職人たちが丹精込めていいものをしっかり作っていました。こうした職人たちの思いの詰まったサンダルを1人でも多くの人に手にしてもらいたいと「ベンサンフェア」を2月の1カ月間、開催することにしたそうです。
「ベンサンフェア」ではサンダルを製造する奈良県の3業者からさまざまな色や種類のサンダルを取りそろえ、展示販売しています。玄関を入ってすぐの場所にもサンダル。脱衣場と玄関を仕切る壁の上にもサンダルがずらりと置かれています。しかもどれも購入可能です。
都湯は、これまでにも出版社と連携したフェアを1カ月にわたって行ったり、さまざまなグッズを販売したりしてきました。しかし、そうした取り組みで何も買わなかった常連の「おばちゃん」がいるそうです。しかし、ある日その「おばちゃん」がサンダルを購入してくれた。原さんは「ちょうど良かったわと言って、おばちゃんが買ってくれた。感動した」と言います。
原さんはユーチューブにフェア開催の経緯や趣旨を公開しています。インターネットで都湯の取り組みを知った石川県のサンダルマニアが、自身のコレクションを見てほしいと約100足のサンダルを自動車に積み、都湯にやって来たそうです。原さんは「サンダルを見せにきてくれて、お風呂も入ってくれた。すごくうれしかった」と振り返ります。原さんは220足を仕入れましたが、半分以上が売れたそうです。「サンダルの色のバリエーションをもっと増やして来年もフェアを行いたい」と話しています。
ベンサンフェアは2月29日まで。サンダルは1足1200円で販売。ちなみに入浴料は大人430円。都湯は木曜日が定休です。