「店に来た小学生から『青い鳥文庫ありますか』と聞かれることがよくある」。大阪市の古書店経営者によるツイッターの投稿が話題を集めている。ツイートを見た人が「懐かしい」というコメントを付けたり、思い出の本をリプライで挙げたりしており、リツイートは8千回を突破した。店主は「これを機に店を訪れてもらえれば」と期待している。
ツイートしたのは、大阪市阿倍野区で「10代をテーマにした古本屋」を売りに「大吉堂」を経営する戸井律郎さん(46)。大阪府の児童館職員などを経て、2014年に開業した。
幼いころから読書好きだった戸井さんは、中学生のときに「次は何を読めばいいのだろう」と悩んだ経験がある。児童書は卒業する年頃だが、一方で大人向けの本は少し背伸びしないといけない。結局、適切なアドバイスを送ってくれる人は周囲にいなかった。その後、30歳過ぎでようやく「世の中には10代の青少年に向けて書かれている本も多くある」と気づいた。10代向けの書籍に特化した古書店にしたのも、そういう原体験があるからという。
品ぞろえで力を入れているシリーズの一つが、ツイッターで取り上げた講談社の「青い鳥文庫」だ。国内外の名作や新作を取りそろえており、講談社によると累計6千万部を発行している。その人気は今も根強く、戸井さんが接客していても「『青い鳥文庫』はありますか」と聞かれることが多いという。投稿には、そうした時に感じる喜びを「『青い鳥文庫』を置いてある場所を自分たちの場所だと認識しているということ。何て素敵[すてき]な本との関係」と率直につづった。
戸井さんのそんなつぶやきに、ツイッター利用者たちも敏感に反応。「わが子は青い鳥文庫は全部面白かったとよく言っています」「コロボックルシリーズ好きだったなぁ」などと共感の輪が広がった。
さらに「青い鳥文庫」以外のシリーズも話題に。小説家の澤田瞳子さんが「私もいまだに本棚に岩波少年文庫を置いています」と書き込んだほか、「小学生のころはポプラ社文庫、中学生のころはコバルト文庫、一生懸命読んでたな」などと振り返るコメントも寄せられた。
そうした反応に「みなさん、10代の心を忘れず持っている」と実感した戸井さん。古本の売り上げを元に10代の居場所づくりにも取り組んでいるといい、「実年齢を問わず10代の心を刺激する本を置いている。ぜひ思い出に浸ったり、新たな発見をしたりするためにも店を訪れてほしい」と願っている。