大学入試の過去問題集「赤本」の出版元で知られる「世界思想社教学社」(京都市左京区)は、「第5回受験川柳」の入選作をこのほど発表した。最優秀賞には、既に推薦で合格していた友人が黙って勉強に付き合ってくれていた状況を詠んだ川柳「志望校 優しい嘘(うそ)を 知った春」(岩間さやかさん、19歳)が輝いた。
同社は、受験に関する悲喜こもごもをしたためた川柳を毎年募集している。今回は全国から3084句の応募があった。
最優秀賞の岩間さんの川柳は毎朝、世界史の問題を出し合いながら一緒に登校していた友人が、実は11月に推薦で受かっていたことを知ったのは卒業してからだったという内容。岩間さんは「志望校の話をした時に合わせてくれてありがとう」とつづっている。
高校生特別賞の「三学期 歩幅狭めて 帰る道」は、家に帰ると勉強しなければならず、下校中も友人たちと過ごす残り少ない貴重な時間なので、早く帰りたくない気持ちを表した。
中学生特別賞の「赤本に ふせんの草が 育つ夏」は、夏休みに赤本のできない問題にふせんを貼り続けると草のようになったが、冬には問題が全部解けるようになり、「草が枯れたらいいな」との思いを詠んだ。
佳作には「合格しても一人」と尾崎放哉のパロディーながら、受験生の孤独を描いた句も。「夢の中 解けた数式 もう一度」と、目覚めると忘れてしまう誰もが経験した状況を詠んだ川柳も選ばれている。
選者の川柳作家、尾藤川柳さんは「どの句も受験を真っ向に捉え、合格への強い意志や夢を感じるとともに、受験生という孤独な時間、来るべき勝負の時への不安など、それぞれが等身大の心の内を17音にしている。誰もが通過する受験という事象を通して、こんなにも人間が描き出されるのを見て、とてもうれしく思う」と評している。