「池袋で黄色いバスを見ると幸せになる」…都市伝説の正体・イケバスに乗ってみた ポケモンGOも楽しめる

北村 泰介 北村 泰介

 東京の繁華街・池袋には、幸せの黄色いハンカチならぬ、黄色いバスが走っている。ツイッターには新年早々に「これでわたしも幸せになれる!」と、黄色いミニバスの画像が投稿された。その正体は、昨年11月27日から運行を開始した「IKEBUS(イケバス)」。最高時速19キロの電気バスである。運行する7台(2月から10台で運行予定)のうち6台(2月から9台)が赤で、黄は1台のみという希少価値から「街で見かけると幸せになれる」という池袋の都市伝説が広がっている。実際に乗車してみた。

 まずは背景から説明しよう。池袋を擁する豊島区が2014年に23区内で唯一、日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」に入った。それは2040年に20~39歳の女性人口が半減し、人口を維持できない市区町村を指す。その危機感から、同区は再開発事業を進める中、駅周辺の公園と商業施設などをつなぐイケバスを運行させた。タイヤは片側5つの計10輪。高さ約2・7メートル、幅約2・1メートル、全長約5・2メートルの小さなバス だ。

 JR池袋駅の東口を発着点としてサンシャインシティなどを経由するAルート(4・6キロ)、同駅西口発着で文化施設が充実したハレザ池袋などを経由するBルート(4・2キロ)があり 、約20分間隔、1周約30~40分の運行。乗車料金は大人200円(1日乗車券は500円)、子ども・高齢者・障がい者は100円(同250円)。記者は両ルートで「イケブクロ・レッド」と呼ばれる真っ赤なバスに乗った。

 通常のバスよりはるかに車体が低い。路面から座席まで96センチ。普段とあまり変わらない目線ゆえ、見逃していた景色や気になる店も発見できた。狭い道でも小回りも利く。バスで散歩している感覚だ。黄色いバスとすれ違った瞬間、乗客は一斉にスマホを向け、同時に通行人も写真を撮っていた。バスの内と外にいる人同士の目が合う。子供たちが外から乗客に向かって手を振り、こちらも応える。カラフルなデザインが施された座席は向き合った状態で計14席。初対面の乗客同士でも会話が弾みそうだ。

 もう1点、感じたことは、通常のバスは「目的地に行くための手段」だが、イケバスは「バスに乗ること自体が目的」の人もいる点。対面にいた女性客は「最初は消防車かと思ったらバスで、何度も見かけるうちに一度は体験したいと思って初めて乗りました。目的地はありません。一周して乗った場所に戻ります。内装も素敵ですね」とお気に入りで、1日乗車券を購入していた。

 豊島区から委託を受け、企画から運行まで関わったWILLERグループの広報・鈴木千草さんにSNSでの反響をうかがうと、「蒼井翔太さんの案内ボイス最高!」という声も多いという。人気声優のアナウンスは1月6日まで。さらに「ちょうどポケモンを楽しめる速度です」というSNS上の反応も。鈴木さんは「ポケモンGОでは安全面から速度制限がありますが、イケバスはゆったり走るので制限にひっかからず、ポケストップを回したり、ポケモンを捕まえるということが可能なようです」と説明した。

  事故防止策として、時速40キロ以上での移動中はポケモンが出現せず、ポケストップも回せなくなる。車や電車内でのプレイはほぼできないが、最高19キロのイケバスでは可能。ただ、タマゴのふ化は時速10キロ以下でなければならないので、それは微妙かと思ったら、くしくも隣席の若い男女がポケモンGОをやっている最中で、その瞬間、タマゴがふ化した。停車前の一桁キロで走行時の出来事だった。「幸せの黄色いイケバス」に加えて「ポケモンGОの移動プレイスポット」という付加価値も発見した。

 ちなみに、時刻表にバスの色は記載されていない。「黄色いバスが運行する便は前日の夕方以降に決まるのでスタッフも知らないのです」と鈴木さん。黄色に乗れるかどうかは運次第だ。そんなイケバス。鈴木さんは「街全体が国際アート・カルチャー都市として大きく変わろうとしている池袋で、点在する魅力あるスポットをつなぎ、まちなか交流バスとして新しい街のシンボルになればと考えています」と期待を込めた。

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