消防団が作った「防火かるた」が謎すぎる その絵でなぜその文字?頭ひねる住民 

高野 英明 高野 英明
待鳳分団の器具庫に掲げられた防火かるたの複製。一見しただけでは意味がわからない札も(京都市北区)
待鳳分団の器具庫に掲げられた防火かるたの複製。一見しただけでは意味がわからない札も(京都市北区)

 京都市の消防団が防火の心得を伝えるため製作したかるたに、近所の人たちが首をかしげている。描かれている絵と文字が結びつかず、何を意味しているのか分からない取り札が何枚もあるからだ。たとえば、消火器の絵は「そ」、にこやかに笑う消防団員は「い」、救急車は「ほ」といった具合。まるで江戸時代のなぞなぞ「判じ絵」のようだ。しかも、謎の取り札はまだあるらしい。答えを求めて作った人に話を聞いた。

 「防火かるた」を製作したのは、京都市北消防団に所属する「待鳳(たいほう)分団」。器具庫の外に掲げた「火の用心」の垂れ幕に、かるたの取り札を11枚張っている。

 たこ焼きの絵をあしらった「た」は「たこ焼き焼いても家焼くな」といったところか。アイロンとコンセントを描いた「あ」は「アイロンのプラグはちゃんと抜いて」と読み取れる。だが、11枚の中には冒頭に挙げた3文字のように、意味が皆目わからない札もある。

 そもそも何のためにかるたを作ったのか。事情を知る団員の数岡義之さん(67)に聞くと、1992年ごろ、地元の小学生たちのレクリエーションに使うため地域の住民団体と協力して製作したという。

 「そ」「い」「ほ」の読み方も尋ねたが、数岡さんは「それがですね」と表情を曇らせ、こう打ち明けた。「読み札がなくなってしまったんです」。なんですと。

 落胆しながらも、現存する50枚の中で読み方を覚えている札を教えてもらった。「も」は黄色い雨がっぱを着た少女がバケツを持ったデザイン。「もしもの時の防火バケツだったかな」と数岡さん。なるほど。

 「の」は、古新聞や段ボールなどが積まれた民家の玄関口に、火のついたライターと紙を手にした人物が迫ろうとしている図柄。放火と関係があるらしい「軒先に燃えやすいものを置いて放火されないようにという意味だったと思います」。それは説明を聞かないと分からないです。

 だが、数岡さんが意味を思い出せるのは一部。「一緒に作った人ですら忘れてしまったらしいです」。30年近くも前のことだから無理はない。

 読み方が分からない取り札の中でも、とりわけ「や行」や「ら行」は難問ぞろいだ。たとえば「よ」。女性が3人描かれ、それぞれ走ったり、棒を振ったり、円盤を手にしたりしている。運動選手のようだが、何を表しているのかは不明だ。

 漫画風のタッチで少女を描いているのは「り」。ピンク色の制服にたすきで「待鳳消防分団」とあるので女性団員らしいと分かるものの、文字とのつながりは分からない。

 「ろ」も女性3人組シリーズ。近未来風の衣装がSF漫画を思わせるが、やはり防火や消防とのかかわりは読み取れない。

 取材に同席してくれた藤原香代子分団長(70)や地元消防署の職員と一緒に意味を解読しようと頭をひねったものの、分からない。お手上げだ。

 そんな謎だらけのかるた。器具庫に長らく眠っていたが、1年ほど前に複製品をこしらえて野外に掲示するようになったという。その理由について、藤原分団長や数岡さんは「競技かるたを描いた漫画『ちはやふる』が話題だったので、登下校で通りがかった小学生の注意を引き、意味を考えてもらおうと思った」と説明する。

 今のところ児童からの反応はないというが、大人が立ち止まって見ていることがしばしばあるそうで、防火の啓発という面では役割を一定果たしているとも言えそうだ。

 さて、皆さんも読み札の内容を類推してみてはいかが?

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