400年以上の歴史で初めての文庫本創刊 老舗出版社があえて挑戦、その勝算は?

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 400年以上の歴史を持つ京都市の仏教書出版社がこのほど、創業以来初めて文庫本を刊行した。出版不況の荒波にあえてこぎ出した老舗の挑戦に注目が集まっている。

 文庫を創刊したのは、京都市下京区の法蔵館。慶長年間(1596~1615年)創業の仏教書出版社兼書店を源流としており、出版界では日本でも有数の歴史を誇る。

 同社は単行本サイズの本を中心に年60冊程度出版してきたが、これまで文庫独自の流通経路を持たなかったため、文庫本を定期刊行したことはなかった。ただ、「法蔵館が発行した単行本を文庫本で読みたい」というニーズは高く、東京の大手出版社から文庫化の依頼は多くあったという。

 文庫創刊はそうした需要を見込んでの経営判断だったが、書籍が売れにくい時代の新たなチャレンジに社内でも異論は少なくなかったという。社内をまとめ、さらに出版取次業者らの協力を得て11月10日に創刊にこぎ着けた。

 最初の3冊は単行本として評価の高かった本で、仏教書「仏性とは何か」、古代ローマの哲学者キケロによる「老年の豊かさについて」、民俗信仰を取り上げた「増補いざなぎ流祭文と儀礼」。本は200~500ページ程度の厚さで今後隔月で発行する予定だ。

 法蔵館の戸城三千代編集長は「今後は広く人文書を対象に書き下ろしの本も文庫で発刊していきたい。ぜひ手に取ってもらえれば」と話している。

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