異色の「あん餅雑煮」で始まる「うどん県」のお正月! 意外にもすっきり味…レシピを聞いた

鶴野 浩己 鶴野 浩己

 お正月といえばおせち料理、でもお雑煮を食べないと新年が始まらないという人が多いのではないでしょうか。お雑煮は地方色が濃く、おすまし仕立て、味噌仕立てなど地域によってスタイルが異なります。なかでも異色なのが「うどん県」として有名な香川県のお雑煮。なんと、あん餅入りの雑煮を食べるのです。なぜあん餅なのか、どんな味なのか…。あん餅雑煮について、ご当地、香川県農政水産部農業経営課の担当者に聞きました。

——あん餅をお雑煮に入れるようになったのはいつ頃からですか?

 明治初期からと考えられています。江戸時代、高松藩は藩を豊かにするために、砂糖・塩・綿という「さぬき三白」の製造を奨励したのですが、中でも砂糖はとても高級品で、庶民が日常使いできるようなものではありませんでした。そこで「お正月くらいは甘いものを食べて贅沢をしよう」と、砂糖入りの小豆あんを入れた餅で雑煮を作り始めたようです。一部では江戸時代からという説もありますが、江戸時代はお殿様くらいしか砂糖を食べられなかったと聞きますので、実際は明治初期からだろうということになっています。

——香川県民は皆、このあん餅雑煮で正月を迎えるのでしょうか。

 満濃町・東かがわ市・小豆島を除く平野部中心の文化のようです。実は香川県には、「白味噌×あん餅」「白味噌×普通の丸餅」「白味噌×塩あん餅」「赤味噌×普通の丸餅」「赤味噌×塩あん餅」「おすまし×普通の丸餅」という6種類の雑煮があり、地域ごとにこれらが入り混じっています。とはいえ、多いのは「白味噌×あん餅」のお雑煮。高松市などでは非常に一般的です。

——甘いお雑煮の味が想像できないのですが…実際、どんな味ですか?

 白味噌仕立てで、意外とすっきりとしています。学生時代に県外の友人に食べてもらったところ、甘党じゃない友人には「おいしい!」と好評でしたが、甘党の友人は「この甘さはちょっと違う」と言っていましたね。スイーツではなく、あくまで食事としての甘さですので、県外のみなさんが想像されているほど甘ったるくないと思いますよ。私は、これがないと正月が始まりません(笑)。

——興味が湧いてきました!あん餅雑煮を食べられるお店などはありますか。家庭でも作れるように、代表的なレシピを教えてください。

 高松市の栗林公園のお食事処のほか、喫茶店で提供しているところもあると聞きます。また、ホテルや旅館によっては元旦の朝食であん餅雑煮を出すところもあるとか。私は家庭で食べるので詳しくはわからないのですが、気になる方は宿泊先などに問い合わせていただけたら。香川の味を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

<香川県「あん餅雑煮」代表的レシピ>

■材料(5人分)
・丸餅(あん入り) 5個
・金時にんじん(3〜5cmの太さ) 50g
・白味噌 100〜130g
・煮干のだし汁(いりこだし) 5カップ(餅の量により加減する)
・青のり 少々
・大根(3〜5cmの太さ) 80g
・豆腐 1/3丁
※豆腐の代わりに油揚げでも可

■作り方
・1、大根、金時にんじんは3mm位の輪切りにする。
・2、煮干でだしを取り、(1)を入れて煮る。
・3、野菜が煮えたらもちを入れ、少し柔らかくなったら白味噌を汁で伸ばして入れる。
・4、3cm角に切った豆腐を入れて一煮立ちする。
・5、椀に盛り、さっとあぶった青のりをふる。
※もちは焼かずにそのまま煮るのが一般的

ちなみに、餅に入るあんこは粒あんが主流だそう。明治初期からの家庭料理ですから、あんこ作りの手間を考えれば粒あんになるのもうなづけます。全国的にも珍しい、香川県のあん餅雑煮。気になった方は、ぜひ試してみてくださいね。

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