日本の国民食である納豆は、地域差が話題になる食材でもある。「関西人は納豆が嫌い」「北海道や東北では納豆に砂糖を入れる」という、2つのケースについて検証した。
まず「関西人は納豆が苦手」というイメージについて、データから実証してみよう。
総務省が発表した2016年の調査によると、1世帯が納豆に費やす年間消費金額は平均3835円。上位5都市は水戸市、盛岡市、福島市、前橋市、青森市の順で、いずれも5000円台なのに対し、下位5都市は堺市、高松市、神戸市が2000円台、徳島市と和歌山市は1000円台。業界紙「フードジャーナル」では全国1位の福島市は6735円で、最下位の高松市は3分の1以下の2055円。いずれも東高西低となる中、関西より、むしろ四国での消費量が少なかった。
全国納豆協同組合連合会(略称・納豆連)はデイリースポーツの取材に対して「地理的、時代的、気質的」な要因を3点挙げた。
「地理的にみると、関西や四国では瀬戸内海などを中心とした魚介類のタンパク質が豊富にとれ、陸路も発展して食材が手に入りやすい。雪に閉ざされる期間もあまりないため、タンパク質の保存食としての需要が東北や北関東より薄かった」
さらに時代的な面で「関西はひるげ、関東はあさげ」という文化が背景にあるという。
「(江戸時代に)関西では冷めたご飯で朝を過ごしていたが、江戸では朝から温かいご飯に合う納豆を売り歩く行商があり、明治以降もそのスタイルは続いた。東京では納豆売りの少年が登場するなど、バイト的に納豆売りができるよう、納豆の卸問屋ができた。逆に関西では東京に対抗心を燃やす気質的にも、納豆を受け入れられない状況になった」
続いて「北国では納豆に砂糖を入れる文化」を分析。かつて北海道出身者から「それが当たり前だと思っていた」と聞かされた筆者は実際に砂糖をまぶし、かき混ぜてみた。すると、粘りがしょうゆやタレの比ではない強さになった。混ぜる時の手応えが数倍重い。かといって単純に甘納豆になるわけではなく、納豆の臭みと食感はそのままに、砂糖の甘みも引き立つという不思議な食べ物になる。
納豆連の広報担当は「納豆に砂糖を入れる文化は東北の北前船ルートで砂糖が運ばれていたことに起因すると考えられています。当時、砂糖は貴重な食材。納豆に砂糖を入れることで、納豆を“ハレの食材化”とさせたのです。現在でもその傾向はあり、(秋田など)北部の日本海側、一部の北海道沿岸に残っている。お正月などには納豆に砂糖を入れたという話を新潟(魚沼)で聞いたことがあります」と指摘した。
もちろん、納豆好きな関西や四国の人も、砂糖を入れない東北や北海道の人もいるが、納豆の幅広い多様性という事実は揺るがない。そう実感させてくれる“地域伝説”は全国各地に残っている。