朝の静けさを破る、ラジオ体操後の「雄たけび」 なぜ叫ぶのか…誰も知らない不思議な習慣

平藤 清刀 平藤 清刀

みなさん、ラジオ体操を終えた後は、どうされているだろうか。大阪のとある公園では、みんなで叫ぶのが普通だ。早朝、体操を終えた人たちは思い思いに声を張り上げ、まだ明けきらぬ光の中、公園には「おおおおおおおーっ」と、異様な雄たけびが響く。なぜ叫ぶのか、いつから叫んでいるのか、最初に誰が叫んだのか、誰も知らない。地元の人にとってはありふれた日常で、誰も驚く人はいないが、とても不思議な習慣だ。

とある公園とは、大阪市の南東部・東住吉区の西端にある「長居公園」。敷地には陸上競技場がふたつ(ヤンマースタジアム長居、ヤンマーフィールド長居)、球技場(長居球技場)がひとつ、障がい者スポーツセンター、屋内外プールなどがあり、スポーツ施設が充実している。2002年のFIFAワールドカップや2007年の世界陸上競技選手権大会など、国際大会の試合も行われた。

早朝、公園のほぼ中央部・ヤンマースタジアム長居の南側にある広いエリアに、三々五々集まってくる人たちがいる。目当てはラジオ体操だ。6時30分ちょうどになると、常設のスピーカーからNHKのラジオ放送が始まる。「あたらしい朝が来た♪」でお馴染みの歌が流れ、ラジオ体操第1、第2と続く。

誰かが前に立って体操指導をしているわけではなく、集まっている人が放送に合わせて自分のペースで思い思いに体を動かしている。その数、見える範囲だけでざっと300人ほど。お互いの邪魔にならないよう、適当に間隔をあけているのは、暗黙のルールなのだろう。髪に白いものが混じっている人が多く、若い人は見当たらない。

ラジオ体操第2が終わった。ラジオ放送も、ここでおしまい…というとき、誰が音頭を取るでもなく、自然発生的に大きな声が沸き起こった。あたりに響き渡る「おおおおおおおーっ」。よく聞いていると「うぉーっ」とか「あ゛―っ」とか「わーっ」と、いろいろな声が混じっていて、それぞれが好き勝手に叫んでいるようだ。これが早朝の長居公園名物「雄たけび」だ。

雄たけびは一斉に始まって一斉に終わる。人々は何事もなかったように解散していく。中には、叫んだままの発声で、詩吟の練習を始めた人もいる。ランニングをしている人も散歩中の犬も驚く様子はない。地元にとってはいつもの時間のいつもの出来事でしかない。

   ◇   ◇

この「雄たけび」はいつから始まったのか。そして、誰が最初に始めたのだろう。解散していく人の何人かに尋ねてみても「いつの間にかそうなってた」とか「みんなが叫んでるから」「大きい声出したら気持ちええやん」という返答ばかり。

そんな中「20年ぐらい前に、ラジオ体操が終わったら1人で叫んでるおっちゃんがおった」という話を聞いた。しかし、どこの誰なのか、今となっては分からない。たぶん、その人と一緒に叫ぶ人が増えていって、現在の形に落ち着いたのではないかと推察するしかない。

一方、早朝のラジオ体操の放送はどのように流れているのだろうか。公園を管理・運営している「長居パークセンター」によると、指定管理者として公園の管理業務を請け負う「長居公園スポーツの森プロジェクトグループ」という、複数の企業と団体で構成するグループのうちの1社が放送設備の管理を担任していて、1年=365日毎朝6時30分になったら自動的にラジオ体操の放送がスピーカーから流れるように設定してあるのだという。ということは、年末年始だろうが、台風の最中であろうが、放送は律儀に流れていたということか。

「長居公園スポーツの森プロジェクトグループ」が管理業務を請け負ったのは、2016年4月からだそうだが、ラジオ体操を放送する設定は前の事業者からそのまま受け継いでいるものだという。少なくとも20年以上は続いているそうだ。

地元の人にすっかり定着したラジオ体操と、その後の雄たけびという不思議な習慣。気になる方はぜひ早起きして、その耳で確かめてみてはいかがだろうか。

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