千葉県在住の伊東昌美さんと夫の誠さんが暮らす自宅のリビングには、2人の大切な家族、ちたまちゃんの写真がお気に入りのブラシなどと共に飾られている。2015年11月に25歳で旅立ったちたまちゃんは、人間で言えば100歳を優に超えるご長寿さんだった。
亡くなる前年に知人のカメラマンに撮影してもらった1枚は、昌美さんも編集に協力した書籍「ご長寿猫に聞いたこと」(日貿出版社)の表紙に採用された、とっておき。赤いちゃんちゃんこ姿のちたまちゃんは、本に登場する103匹の長寿猫の最高齢として存在感を放っている。
「私たちにとっては特別な猫ですが、どこにでもいる普通の猫です。元々は夫の連れ猫、結婚した時にもれなく付いてきて。夫は25年、私が一緒に暮らしたのは12、3年になります」。昌美さんは懐かしむ。ミルクもうまく飲めない赤ちゃん猫を、誠さんが車の下で見つけたのが縁の始まり。小さい「たま」だから「ちたま」と名付け男手で育ててきた。
昌美さんが一緒に暮らすようになった時には、すでに2度の出産、子育てを終えていた大人の猫。だからだろうか。「どっしりと肝が据わってるんです。一緒に暮らしても嫉妬とかは全然なく、どうぞ、どうぞって感じで。世話もかからないし怒った記憶もなくて」
体はきゃしゃで小さめながら、食欲旺盛で病気知らず。20歳を迎えるまでは病院のお世話になることもなかった。それでも老いは例外なく訪れる。眠る時間が増えていき、目や耳が悪くなると夜鳴きが始まった。不安そうに「アオーン。アオーン」と大声を出すちたまちゃんをヨシヨシとさすり、落ち着かせた。