「大人の修学旅行」85歳で終幕 戦後の混乱期で行けなかった小学校同窓生ら、最後の旅行へ

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 戦後の混乱期のため72年前に修学旅行に行けなかった下鴨小(京都市左京区)の卒業生が、定期的に三重県の伊勢地方に旅行を続けてきた。しかし今年、85歳となったのを機に最後の旅行とすることに。参加者は「この年で修学旅行に行けるのは幸せ」と話し、有終の美を飾るつもりだ。

 「大人の修学旅行」を続けてきたのは、1947年3月に下鴨国民学校(現下鴨小)を後にした卒業生たち。卒業生の一人、池田宗子さん(84)=左京区=は「当時は戦後直後で食べ物にも欠く状態。修学旅行どころではなかった」と話す。

 同窓生たちは「先輩たちも行っていた修学旅行に行きたい」と思いを募らせていたが、長年かなわなかった。還暦を前にした94年にようやく実現。約200人の卒業生のうち21人が参加し、伊勢地方へと向かった。

 以降、2005年、14年と、ほぼ10年置きに伊勢旅行を実施した。しかし、介護を受けたり、遠出に家族が反対したりするなどして次第に参加者が減少。85歳となる今年で伊勢への修学旅行を最後とすることにした。

 最後の修学旅行の参加者は6人の予定。12日から1泊2日で、伊勢神宮(三重県伊勢市)の内宮[ないくう]と外宮[げくう]を参拝し、内宮の門前町の「おかげ横丁」を散策する計画だ。

 参加する石井丈夫さん(85)=滋賀県草津市=は「スケジュールはゆったりと組んだ。気楽な仲間とのんびりと過ごしたい」と話す。一方、池田さんは「今回で最後になるが、できれば90歳のときにたった1人ででも伊勢に行きたい」と意気込んでいる。

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