部屋で怪奇現象、壁はスイッチだらけ…ホテル激戦区の京都に出現した「不思議な宿」が話題 

高野 英明 高野 英明

 入ってみたかったのが「怖い部屋」。怪奇現象が「調節」できるという。壁のつまみを「1」に合わせると、ノックとピアノの音が室内に響いた。これぐらいでは驚かない。お次は「2」。「バチバチ」という電気がショートするような音が流れ、照明がせわしなく明滅する。「3」にすると部屋が怪しい赤色に染まり、女の子の「通りゃんせ」の歌声が。エアコンが効いているせいもあるだろうが、なんだかぞくぞくしてきた。「4」にすると、もっと怖い演出があるが、書くのはこれぐらいでやめておこう。

 そして「多い部屋」。壁一面にスイッチが取り付けられている。スイッチ好きの子どもにはたまらない客室だ。音符が書かれているスイッチを押すと効果音が鳴る仕掛けがあり、複数のスイッチを連打すると「さくらさくら」を演奏できたり、ロックやジャズが流れたりする。

 客室は全部で11室。ほかにも、「カタン」や「スコットランドヤード」といった世界中のボードゲームを集めた「ボドゲの部屋」、歴史上の人物が降霊しているという「憑依(ひょうい)の部屋」、障子に裏から投影される映像が変わる「景色の部屋」など、趣向を凝らした客室がある。中には「贈る部屋」というロマンチックなネーミングも。恋人と泊まった時にサプライズが演出できるらしい。詳しく言うとやぼなので伏せておこう。

 どうしてこんな遊び心満載の宿にしたのか。背景には京都市の宿泊施設をめぐる厳しい現状があるという。訪日客の増加を商機とみたホテルやゲストハウスの開設が市内で相次いでおり、東京五輪が開かれる2020年には客室数が5年前の2倍近くになる見通しだ。競争激化で廃業するゲストハウスすら現れ始めた。

 松山さんは「京都は宿泊施設が増え、価格競争が激しくなっています。値段や設備とは違った面で魅力を打ち出したかったんです」と説明する。

 コンセプトに掲げたのは「エンタメとテクノロジーと京都の融合」。音声認識やセンサー、コンピュータープログラミングなどの技術を組み合わせ、単に泊まるだけはでない「遊べる宿」を目指した。その狙いは当たり、7月のオープン以来、カップルや女性グループを中心に宿泊は好調に推移しているという。ツイッターで話題になったことで9月は予約が殺到しているのだとか。

 「いずれ宿そのものが京都の観光スポットとして定着すれば」と松山さん。新たな京都名物になることを夢見ている。

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