「多肉女子、多肉男子」が増殖中、だという。まちがわないでほしいが、けっして「肉食女子、肉食男子」ではない。その関心は異性ではなく焼肉でもなく、植物にむかっている。それも、乾燥地帯に適応した多肉植物と呼ばれるプラントにたいしてだ。そういう意味では、これはある種の「草食系」かもしれない。
乾燥地帯の植物といえばサボテンが思い浮かぶが、園芸業界では一般に「サボテン」とそれ以外の「多肉植物」にわけている場合が多い。サボテン以外の多肉植物で人気なのは、肉厚の葉の内部に水分をためこんだものだ。過酷な自然環境に適応するために、独自の進化をとげたことで、どこか奇妙でユーモラスな姿を生みだしている。
たとえばエケベリアは、肉厚の葉を地表に並べたロゼット型がその特徴だ。多くの原種がメキシコを中心に中南米に分布している。カランコエは、東アフリカやマダガスカル島を中心に生育し、やはり肉厚の葉っぱが特徴的だ。冬場には花を見ることもできる。パキフィツムはぷっくりとした丸みのある葉をもち、これに白いロウを塗ったような姿をしている。ハオルチアは南アフリカのケープ州を原産地とし、葉がレンズのように光の透過する軟葉系と、葉が硬い硬葉系にわかれる。
園芸店やホームセンターに足を運ぶと、こうした植物たちがずらりと並べられている。人気の秘密はプニプニした葉の質感や個性的な形にある。一鉢200円前後のものから10万円を超えるものまで値段も種類もさまざまだ。
兵庫県芦屋市の女子学生(20)は「奇妙な形がおもしろくて」、多肉植物に「はまった」ひとりだ。その形が、照りつける太陽や強風にさらされる荒野で、なんとか生きていくための工夫だ思うと、興味がわいたそうだ。
栽培するうえで水のやりすぎには注意が必要だが、品種によって育て方は異なる。人気を反映して、雑誌の特集が組まれたり関連書籍が出版されるが、流行の移り変わりが激しく、なかなか情報を追いかけきれないのが実情のようだ。増殖中の多肉女子や多肉男子たちはインターネットで栽培方法を探したり、英語のサイトを訪れたりするなど、情報収集に苦心している。