コアラの子どもは親のうんこを食べるって、ご存知でしたか?その理由はコアラの主食であるユーカリの「毒」にあったんです。そんな植物ネタ満載の新刊「だれかに話したくなる あやしい植物図鑑」(ダイヤモンド社)が今夏、発行された。同書には96種が紹介されているが、その中から、身近な存在である動物や食物に関連したネタを3題、監修に当たった植物研究家の菅原久夫氏の解説と共に紹介しよう。
(1) ユーカリの毒のせいで、コアラの子どもは親のうんこを食べる。
コアラが主食にしているユーカリの葉には他の動物が食べると死に至るほどの猛毒があるという。コアラはそのユーカリを無毒化する細菌を腸で飼っているために死ぬことはなく、他の動物にとってはアンタッチャブルなユーカリが食べ放題という特典を手に入れた。この細菌は生まれたばかりの子どもにはないため、親のうんこを食べ、細菌を体内に取り込むことで葉が食べられるようになるというわけだ。
菅原氏は「食糞行動というのですけどね。糞を食べるという行為はいろんな動物で見られます。ウサギなどがそうですね」と補足した。
(2) 芸術だけでなく、ゴーヤも爆発する。
ゴーヤチャンプルーなどの食材・ゴーヤ。料理で使われる実は若い緑色の時期で苦いが、成熟すると緑から黄色に、種は赤く変色し、甘くなるという。ゴーヤは「ツンデレ」なんです。若い時は硬く苦く、種を狙う鳥には「ツンツン」して寄せ付けない。ところが、熟すと態度を一変。実の口を「デレ~」と半開きに、赤色の種で鳥をおびき寄せ、時には自爆して種をまき散らす。その種(たね)を口にした鳥を運び屋にして、種を遠くへ運ばせ、拡散させ、種(しゅ)の保存がなされる。ゴーヤにはそんな生きざまがあったのだ。
菅原氏は「甘くなった種の赤い色は鳥に対するサイン。鳥がそれを食べ、こぼして種を拡散する。植物は動けないものですから、動物や風や水を使って種を散布する。植物は動物をコントロールし、うまく使って子孫を残す。植物もどう生きるかということを精いっぱいやっています」と解説した。
ちなみに、甘いゴーヤは食べられないのでしょうか。菅原氏は「おいしいですよ。私は食べています。ゴーヤ料理に甘い実は使いませんから、みなさん苦いのが好きになっちゃったんじゃないですか。黄色くなった甘いのをサラダにしたりして食べるのもいい」と推奨した。若い緑色の実より日持ちはしないので、採ったらすぐ食べることが肝要だ。
(3) イチジクの中は死体でいっぱい。
イチジクの実の中にはコバチの死体でいっぱいなのだという。イチジクの受粉を手伝う代わりに子どもを100匹以上生むが、生きて脱出できるのはメスだけで、羽根のないオスと力尽きた母親の死体が残されるという。
だが、ご心配なく。菅原氏は「日本で売られているイチジクは全く問題ない」という。同氏は「イチジクにはオスとメスの木があり、日本で栽培されているイチジクはメス株で、受粉しなくても甘く熟すので全く心配はない」という。
以上、3題のほか、「カスミソウは、うんこのにおい」「ヤギがたくさん登っている不思議な樹木」「血まみれのキノコ」など気になる項目が並ぶ。教鞭をとる傍ら、植物の生態調査を行っている菅原氏。「私たちが知らないだけで『わっ、すごいな』というのがいっぱいある。そんな面白さを感じていただけたら」と魅力を語った。