邦画で性描写が減る理由とは?ロマンポルノを支えた脚本家・荒井晴彦に聞く

石井 隼人 石井 隼人
映画『火口のふたり』脚本・監督の荒井晴彦(撮影:石井隼人)
映画『火口のふたり』脚本・監督の荒井晴彦(撮影:石井隼人)

俳優の柄本佑(32)と女優の瀧内公美(29)が主演する『火口のふたり』(8月23日公開)は、激しい性愛描写を通して男女の赤裸々な心の内を描き出すR18指定の衝撃作。

映画『赫い髪の女』『Wの悲劇』『大鹿村騒動記』で知られる名脚本家・荒井晴彦(72)がメガホンをとった。企画立案から映画化実現まで、かかった歳月は約5年。一番のネックになったのは、本作のキモともいえる激しい濡れ場だった。

エロスがスクリーンやテレビ画面を通して視聴可能だった時代も今は昔。様々な分野で自主規制が推し進めらる現代において、にっかつロマンポルノの時代から性愛を通して人間の姿を描き続けてきた荒井監督は、近年より一層エロス表現の高い壁を感じている。

まずは演じる側の問題。荒井監督は「やってくれる人がほとんどいないし、たとえ俳優本人が乗り気になったとしても、芸能事務所が『CMの仕事が来なくなる』などの理由で断ってくる。ハリウッドではニコール・キッドマンやシャーリーズ・セロンら大物女優が脱いでいるのに」と残念そう。その結果、濡れ場シーンは描かれないか、あっても濁すような中途半端な表現になってしまう。

若い観客の感受性の変化も感じている。「“草食”なんて言葉が生まれたように、若い男の童貞率も高い。アニメやファンタジー系は観るけれど、リアルな男女の物語は避けられがち。少女漫画原作のキラキラ映画ばかりが溢れたことによって、濡れ場のあるリアルな物語に対する拒否感が強くなっている」と分析する。

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