京都市内で表具店を経営する男性から、和室に関する声が京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。茶道や華道といった日本文化をはじめ、京都の伝統産業に深く関わる和室だが、生活の洋風化に伴い、需要が変化している。
声を寄せた男性は家業の表具店を継いだが、「昔は京都は賃貸でも和室があったが、今は新築で和室はほとんどない。アレルギーの不安もあり、畳からフローリングに改装する家も増えている」と嘆く。
イ草・畳表の国内最大の生産地、熊本県にある同県い業生産販売振興協会によると、畳の需要は年々下降傾向だ。2018年の販売量は輸入も含めて約1200万畳。1993年の3分の1以下にまで落ち込んでいる。
表替えの手間や費用がネックに
なぜ和室離れが進んだのか。全国い生産団体連合会(熊本県)のアンケート調査では、畳表替えの経費や手間がかかる▽フローリング生活が主流になっている▽管理が悪いとカビやダニの発生が気になる▽建築費用が高い―と手入れやコストを課題に挙げる消費者が多かった。
京都畳商工協同組合(上京区)の細川哲夫理事長は「確かに手間はかかるけれど畳はいい。転んでも柔らかいし、冬は暖かく、夏は涼しい。畳の素晴らしさを知ってもらいたい」と話す。
業界では体験教室や寺院での「畳供養」を新たな行事として営むなど、畳の長所をPRするイベントで新規需要の開拓に力を入れている。そうした取り組みが奏功して、最近では伝統に裏打ちされた技として徐々に評価が高まってきているという。
実際に明るい兆しが見られる。訪日観光客の増加により、高級感や京都らしさの演出として和室を採用するホテルやカフェが増えてきた。全国畳産業振興会(南区)の神邉鑅一相談役は「畳の良さを体験して、畳を自宅に入れようという外国人も増えている。平安時代に生まれた畳は日本固有の敷物。国内外で日本の伝統文化として理解を深めてもらえればうれしい」と需要の広がりに期待している。