世界にただひとつ、八角形の「マリメッコ」茶室と千利休の共通点

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 北欧のテキスタイルブランド・マリメッコとのコラボレーション茶室が、「大阪市立東洋陶磁美術館」(大阪市北区)で開催中の『マリメッコ・スピリッツ展』に登場した。

 カラフルなお花プリントがトレードマークのマリメッコと、侘びさびの茶室という組み合わせは、意外性にもほどがある。その茶室は、一目で「マリメッコ!」な、水玉ファブリックを張った囲い。しかも形は八角形だ。

 この茶室を発案した、同館の館長・出川哲朗さんは「展覧会のテーマが『フィンランド・ミーツ・ジャパン』。日本の伝統的な茶の湯の文化を通してマリメッコと出会う試みです。マリメッコ側とディスカッションを重ね、日本の茶室について理解も得られました」と語る。設計を手がけた茶室建築家の飯島照仁さんに話を聞いた。

 ──マリメッコと茶の湯って、うまく融合するのでしょうか?

 「マリメッコの茶室を作るにあたって、イメージしたのは千利休です。利休は非常にやさしい茶室を作った人で、自然を大切にしました。マリメッコが表現する北欧の美意識と、通じるところがあるのです」

 ──なるほど、侘びさびを超えたところで、マリメッコと利休はつながっていたと?

 「ですから、この茶室は、利休が作った国宝の茶室『待庵』に見られる、包まれるような、球体のような空間にしたかったんです。球体は難しいので八角形にしました。三畳に板畳を敷いた八角形の茶室。これは、世界にただひとつです」

 ──マリメッコらしい個性的なファブリックが目立っていますが、どんな柄を使われたのでしょう?

 「この美術館は、川沿いの水辺にありますから、水辺でお茶を楽しむという趣向なんです。外側にキヴェット(Kivet・石)を張って、堂島川の河岸をイメージしました。反対側にはヒヤシンティ(Hyasintti・ヒヤシンス)。室内の壁に張ったレット(Letto・湿原)には、水のいきものがいます。天井には、ティーリスキヴィ(Tiiliskivi・煉瓦)。オレンジの格子で、侘び茶の草庵の茶室の天井に使われる「竹木舞」を見立てました。茶道口が開いて亭主が登場すると、水屋(控え室)に張ったウニッコ(Unikko・ケシの花)が現れます。そして、お茶が始まります」

 ──実際に茶会を開くことを想定した、本気の茶室なんですね?

 「そうです。手がけたのは茶道裏千家家元出入りの職方たち。茶室の工法にならって釘を1本も使わず組んでいます。西洋と東洋の出会いを表現するため、たとえば数寄屋建築では通常、横長にする障子の組子(桟)を縦長に変えて、西洋的なリズムを感じさせています」。

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 茶道はもともと、粋とされた男性のたしなみのひとつ。戦国時代の武将から明治・大正時代の実業家まで、茶の湯にハマった男たちは、道具を選んだり、見立てたりして、茶会に世界観をつくる遊びに真剣勝負をかけてきた。

 その情熱は時代を超え、令和のいま、館長、茶室建築家、職人たちという現代のオジサマ方が叡智とプライドを注いだのが「マリメッコ茶室」だ。茶の湯は「出会いの芸能」。この茶室はかわいいだけでなく、日本とフィンランドの一期一会の出会いの場でもある。

 「北欧の長くて暗い冬からマリメッコのような明るいデザインが生まれ、千利休も戦乱の時代に心が豊かになるものを求めた。自然を大切にするという点でも、両者には通じるものがあります」と飯島さんは説明する。

 出川哲朗館長は「茶会ができる、本物の茶室をつくりたかった。それが、展覧会のテーマ『フィンランド・ミーツ・ジャパン』だと思います」と話す。世界にただひとつの「マリメッコ茶室」で、大阪からマリメッコへの「おもてなし」を感じてほしい。料金は一般1200円。展示期間は10月14日まで。同時開催の『フィンランド陶芸 芸術家たちのユートピア−コレクション・カッコネン』では、アラビア製陶所のデザイナーらの作品などが紹介される。

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