京都の池、シカ害増加で「奈良公園化」 氷河期から生存の花、食い荒らされる

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ドローンで深泥池のシカ害を調査している丹羽准教授。例年は左側の岸辺にミツガシワが白い花を咲かせるが、今年はシカに食べられてしまっていた(京都市北区)
ドローンで深泥池のシカ害を調査している丹羽准教授。例年は左側の岸辺にミツガシワが白い花を咲かせるが、今年はシカに食べられてしまっていた(京都市北区)

 生息する動植物が国の天然記念物に指定されている深泥池(みどろがいけ)(京都市北区)で、春に開花する希少植物ミツガシワがシカの深刻な食害に遭っている。近くの住民から「今年はミツガシワが皆無に近い」との情報が京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。深泥池を毎年調査している研究者も「今年の被害は例年以上」と指摘。東側の宝が池(左京区)でもシカの食害が見られ、周辺の住宅地での目撃情報も増えていることから、「洛北一帯が『奈良公園化』している。対策が必要だ」と訴えている。

 ミツガシワは、湿地や沼に生える多年草の水草。氷河期から生き残った植物とされ、京都府のレッドデータブックで要注目種に指定されている。深泥池では岸辺や浮島に群生しており、毎年4月ごろに白いかれんな花を咲かせる。

 左京区の主婦(58)からミツガシワの被害について情報提供があったのは4月中旬。取材に対し、「開花を楽しむため毎年春に訪れているが、今年は浮島のところしか咲いていない。シカに食べられてしまったのではないだろうか」と落胆した様子で語った。

 深泥池のシカ害を小型無人機ドローンで継続的に調べている研究者がいる。京都先端科学大バイオ環境学部の丹羽英之准教授だ。一緒に現地を訪れると、岸辺近くの湿地に生えているミツガシワの上部分が刈り取られたようになくなっていた。周辺には、シカとみられる足跡やふんが無数に残っていた。丹羽准教授は「今年の食害はかなりひどい」と話した。

 丹羽准教授によると、深泥池へのシカの侵入が激しくなったのは数年前から。ドローンの空撮画像を年ごとに比較すると、シカに踏み荒らされたとみられる黒い部分が湿地帯にどんどん広がっているという。

 「宝が池でも同様にコバノミツバツツジがシカに食べられているので、両方の池を行き来しているのだろう。行政がシカの捕獲を進めているが、繁殖のペースに追いついていない。今のうちに手を打たないと、生態系が変わってしまうのではないか」と危惧する。

 深泥池を管理する京都市文化財保護課は「シカの周回路に当たる池の南東側に柵を設け、通れなくするアイデアも寄せられている。さまざまな研究者の意見も踏まえ、対策を考えていきたい」としている。

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