新型コロナウイルスの流行でマスク着用が定着する中、京都・滋賀各地の登山道で昨年から、マスクごみが目立つようになった。多くはポリエステルなどの化学繊維でできている不織布マスクのため、土には返らない。他人の使ったマスクを回収することもはばかられるため、多くは放置されたままで厄介な存在になっている。
5月中旬、人気の登山コース「京都1周トレイル」の二ノ瀬(京都市左京区)-山幸橋(北区)間を歩くと、約4キロの行程に9枚のマスクが落ちていた。落ち葉に埋もれていたり、ぼろぼろになっていたりしていて、耳にかけるゴムでマスクと判別できるものもあった。
滋賀県と三重県の境にある御在所岳(1214メートル)の「中道コース」でも、約3キロの行程中に7枚のマスクが見られた。マスクを着けて登る人は少なかったが、休憩時はマスクをする人が多く、その際の出し入れで落とすケースもあるとみられる。
滋賀県の比良山系で登山道整備や救助活動をする「レスキュー比良」の宮永幸男さん(73)によると、マスクごみは京都、滋賀の多くの山域で、昨年から目立ち始めたという。「白い物があるなと思うと、だいたいマスク。わざと捨てたのではないだろうが、気を付けてほしい」と話す。
そもそも、屋外スポーツで「密」になるシーンも少ない登山にマスクは必要なのか。京都府山岳連盟の湯浅誠二会長(72)は「休憩時やテント泊などはマスクが必要。歩行中は息苦しいので外し、人同士の距離を保って行動するなどの対策を」とアドバイスする。
同連盟は、清掃登山も実施しており、湯浅さんは「感染リスクを考えると素手では拾えないので、最近は火ばさみを携行して拾っている」と話す。
不織布マスクは、自然環境にどのような影響を与えるのか。プラスチックゴミの環境負荷などに詳しい大阪商業大の原田禎夫准教授(公共経済学)は「不織布マスクは、綿などの布素材と思っている人も多いが、プラスチック素材で自然界では分解されない。登山などの屋外レジャーは密になりにくいし、落とす可能性も考えると、布マスクと適切に使い分けることが望ましい」と指摘する。
原田准教授によると、昨年1年間でマスク15億6千万枚が海洋に流出した推計もあるという。山のマスクがすぐ海に流れていくことはないが、「紫外線などで劣化し微小片となり、山の植物や水生生物の成長に影響を与える可能性がある」と注意を促す。