韓国の山に捨てられていた犬 保護して1年後にようやく「ワン」

岡部 充代 岡部 充代

 実は、ココ君は韓国の山に捨てられ、子どもたちにおもちゃのピストルの標的にされていたと、譲り受けた人から聞いていました。だから「声帯を切られる」などという残酷なことが頭をよぎったのでしょう。家の庭に放すと茂みに隠れて出てこなかったと言いますから、相当つらい経験をしてきたことがうかがえます。

 そんなココ君がある日、かすれたような、上ずったような声で「ワン」と鳴きました。引き取って1年が過ぎた頃のことです。想像の域を出ませんが、韓国では吠えるたびに叱られたり虐待を受けたりして、それがトラウマになっていたのかもしれません。「ようやく自分の家だと思えたんでしょうね」。ご主人は足元に座るココ君をなでながら、目を細めて言いました。

 そのご主人に馴れるのにも、やはり1年近く掛かったそう。「ココにとっては妻が主人で、私は召使ですよ(笑)」。今となっては笑い話ですが、男の人が苦手で、散歩中も男の人から逃げるようにしていたと聞くと、やはり韓国時代のつらい記憶が残っていたのだろうと思います。

 でも、それは昔の話。今は幸せいっぱいです。「私たちの年齢的に、ココが最後の犬になるでしょう。いい出会いでしたね」とFさん。海を越えて幸せをつかんだココ君は、きょうも家族を笑顔にしています。

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