バイトテロによる不適切動画 従業員への罰金は合法か

平松 まゆき 平松 まゆき
 平松まゆき弁護士
 平松まゆき弁護士

 A はい。ですが就業規則の「減給」と、単なる「罰金」とは性質が違います。懲戒処分というものは、懲戒規程自体の有効性が問われますし、いざ処分となると客観的で合理的な理由や、社会的相当性なども求められます。要するに、懲戒処分は会社側として乗り越えるハードルがそれなりに高いんですね。簡易に徴収できる罰金とはわけが違います。

 Q そうすると今回の相談のケースではどうなるのでしょうか?

 A バイト先が就業規則で周知するでもなく、いきなり根拠のない金額で罰金ルールを始めたのだとしたら、バイト先の決定は違法ということになります。そしてこの違法については6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という重い罰則があります。たとえ貯まった罰金を従業員の飲食代に還元するとしても結論は変わりません。なお、労働基準法24条1項は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」としていますので、給料から天引きすることもまた違法ですね。

 Q でも最近は「バイトテロ」が社会問題になっていますし、ちょっとバイト先が気の毒な気もしますが。

 A もちろん従業員の悪質な行為によって会社に損害が発生した場合にまで損害賠償請求が禁じられるわけではありません。労働基準法16条は、実損害とは無関係に違約金または賠償請求の予定をしてはならないとしているだけであって、従業員の故意過失によって生じた損害について、民事上(または刑事上)の責任を追及することは当然可能です。不適切動画問題については各社が法的措置を検討しているようですので、新たな法整備の可能性も含めて今後の動向に注目したいですね。

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