「辞めます」退職代行サービスから連絡が…企業はどう対応すべきか「退職は認めないといけないの?」弁護士が解説

長澤 芳子 長澤 芳子

みなさんは「退職代行」のサービスについてどこまで知っていますか。エン・ジャパン株式会社が運営する総合求人サイト「エン転職」が2023年に行った調査によると、退職代行サービスの認知度は72%であった一方で、実際に利用した人の割合は2%でした。

つまり退職代行サービスは知っているものの、実際に利用されることが少ないことが分かります。だからこそ実際に退職代行サービスから連絡があると戸惑ってしまう経営者も多いです。

父親が経営していた会社を引き継いで5年目の経営者であるAさんも、まさか自分の会社が退職代行サービスの人と関わるとは思っていませんでした。

ある日、Aさんの会社の従業員・Bさんが会社を休みがちになります。その後、実は会社に対して不満を抱いていたBさんは、退職代行サービスを使って会社を辞める旨を伝えてきました。

Bさんと直接会話することなく会社の退職を進めようとする退職代行サービスに、Aさんは従わないといけないのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞いてみました。

ー一般的な退職と、退職代行サービスを使った退職とで異なる点はありますか。

会社とのやり取りを誰がおこなうかが大きな違いです。一般的な退職であれば、本人が退職願を提出し、引継ぎや有休消化などを交渉して退職日を迎えます。しかし退職代行を利用すると、本人が会社とやり取りをすることなく退職手続きが可能です。必要な書類は本人から代行業者に提出し、本人に代わって業者が退職届を提出したり、貸与物を返却したりします。

ー退職代行サービスから連絡が入った場合、企業はどう対処すればいいのでしょうか

まずその退職代行サービスが、どのような会社が運営しているのか確認した方がいいでしょう。退職代行サービスを運営しているのは、大きく分けると弁護士、労働組合、一般企業の3つに分類されます。

このうち本人に代わって企業と退職日や有給休暇の消化、未払い賃金の支払いなどの交渉ができるのは、弁護士と労働組合です。一般企業が企業とこのような交渉をおこなってしまうと「非弁行為」に当たるため違法となります。

ただしいずれの場合でも、法律上は退職にあたって企業側の合意は必須要件となっていないため、労働者の退職の意思を覆すことは法律上できません。そのため退職代行サービスの運営会社を確認後は、Bさんの退職意思を尊重したうえで、有給消化や社会保険の手続きなど条件を交渉することになるでしょう。

万が一退職する従業員によって企業が損害を被っていた場合には、損害賠償請求をおこなうことも可能です。交渉や訴訟という話になれば、一般企業による退職代行サービスは対応できなくなるため、本人が出てこないといけません。

弁護士や労働組合が代行していた場合でも、本当に訴訟となれば本人が追加費用を支払うことができず、退職代行の利用をやめてしまうこともあるかもしれないです。

ー逆に、従業員側が企業から困る要求をされることもありますか

従業員の退職代行をおこなったこともありますが、企業が退職自体を認めないというケースは少ないです。退職代行として企業に連絡をすると、最初は強硬な態度を示すこともあります。しかし企業側も顧問弁護士に相談した結果、法律上、退職の拒否ができないことを認識すると、すんなり話が進むようになります。

懲戒解雇を訴える企業もありましたが、本人が懲戒理由にあたるようなことをおこなっていなかったため、懲戒解雇にはなりませんでした。

ー退職代行の過程で、無理を言ってくる企業はありましたか

企業側は何とかして本人と会って話をしようとすることがあります。従業員の荷物を取りに来させようとしつこく言われたこともありました。その時は私が代わりに会社に赴き荷物を引き取りました。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

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【出典】
7700人に聞いた「退職代行」実態調査ー『エン転職』ユーザーアンケートー(2023年10月公表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000738.000000725.html

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