鹿児島「妙見温泉ねむ」オッドアイの“入り猫”ユキ

九州温泉ねこめぐり

西松 宏 西松 宏

 小さいころから猫好きだった只野さん。だが、20歳のころ悲しい体験をして以来、「ずっと猫を飼いたかったが、その時の記憶が心にひっかかり、踏ん切りがつかずにこれまで生きてきた」という。

 「20歳のころ、寿司屋で配達の仕事をしていました。ある日の配達の途中、子どもたちが子猫にホースで水を浴びせているのを目撃したんです。その時はわからなかったのですが、夕方、器を回収するため再びそこを通ったら、その子猫がぐったりしていて…いじめられていたんだなと。すぐ病院へ連れていくと、先生いわく『耳に水がいっぱい入っている』とのこと。手術をしてもらい、私が飼うことになったんですけど、結局よくならず、半年後に亡くなってしまったんです」

 「ジュリー」と名付けた幼いメスの黒猫。「その子の命を助けてあげられなかったことがずっと心残りで…」(只野さん)

 ユキを見た時、まず頭をよぎったのはジュリーのことだった。「今度は死なせるわけにはいかない。まずはけがを治すのが先決だ」と、只野さんは近くの動物病院へユキを連れていった。

 訪れた動物病院は初めてで、応対した獣医師の男性とは初対面だった。カルテの只野という名字を見て、獣医師は「鹿児島では珍しいですね。北海道とかのご出身では?」と尋ねた。実は只野さんは北海道出身。獣医師は「私も北海道の大学出身で、学生の頃、牧場で実習をしていて、そこの経営者にはよくお世話になったんです」と懐かしそうに話した。

 それを聞いて只野さんは驚いた。というのも、獣医師が「世話になった牧場の経営者」というのは、偶然にも只野さんの父親の兄(伯父)だったのだ。そして、伯父はそのちょうど1週間前に亡くなったばかりだった。

 「不思議なご縁って本当にあるんですね、と話をしました。伯父が先生とこの子と私を引き合わせてくれたのかもしれません」(只野さん)

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