車の前面から聞こえる「ギリギリギリ」という異音。「火が出るんじゃないか」「煙が出るかも」。そんな不安を抱えてディーラーへ向かった、67歳の看護師けいさん(@gorotsuyoshin)。
そこで出会った女性整備士さんの対応と、その結末がSNSで大きな話題を呼んでいます。けいさんに何が起こったのか聞きました。
「メーターの後ろかな?」と信じ込んでいた異音の正体
きっかけは7月23日のこと。施設で転んだ実家の父のお見舞いに向かう途中、車を走らせて5分ほどで、運転席のメーターやエアコンの辺りから、不定期に「ギリギリギリ」という音が鳴り出したといいます。通勤や買い物、孫の送り迎えにも使っている大切な愛車です。
帰りに職場近くのガソリンスタンドで相談したものの、「実際に音が鳴っていないと分からない」と言われ、その日は原因がつかめないまま。8月2日の夕方、ディーラーに時間を取ってもらい、車を持ち込みました。
すると、女性整備士さんが現れ、「音がしないので、一緒に乗りますから、車を走らせてくださいませんか?」と声をかけてくれました。車の運転にあまり自信がなかったというけいさん。その不安を伝えると、整備士さんは笑顔でこう言ったそうです。
「じゃあ、私が運転しますから、隣に乗ってください」
始まったのは、ちょっと不思議な「異音探しのドライブ」。しばらく走ると、ついに例の音が響き始めました。けいさんが「今の音です!」と伝えても、1回目は気づいてもらえません。しかし2回目に音が鳴ったとき、整備士さんが即座に反応しました。
「この音ですか!これはドラレコからの音ですね」
なんと、メーター付近だと思い込んでいた異音の正体は、ルームミラーの後ろに取り付けていたドラレコ(ドライブレコーダー)の配線の接触不良だったようです。
「恥ずかしい」を吹き飛ばした、整備士さんの粋な計らい
「メーターの後ろとしか思っていなかったので、『恥ずかしい』のひと言に尽きます」と振り返るけいさん。しかし、整備士さんはそんなけいさんの気持ちを察したのか、終始明るく、まるで楽しいドライブのように接してくれたといいます。
ドラレコの買い替えについて「うちは高いから、量販店で買ったほうがいいですよ」と親身にアドバイスしてくれ、2人で大笑い。車への愛着も語り合ったといいます。
そんな整備士さんの姿に、けいさんはすっかり魅了されてしまったそうです。
「髪を一つに束ねて、日焼けした笑顔が本当にきれいで。つなぎ姿がすごくカッコよくて、『この方にお願いしたい』と思えるような安心感がありました」
驚くことに、車から降りた後には「特に何もしていないので、お代は要りません」と、最低限の料金さえ受け取ろうとしなかったそうです。ドライブまで付き合ってもらったのに――。けいさんは「逆にどうしよう」という気持ちのまま、帰路につきました。
この出来事をXに投稿すると585万回以上表示され、大きな反響が寄せられました。「女性整備士さん、めちゃくちゃ仕事できて優しそうで最高ですね」「技術だけでなく、お客様が安心できる雰囲気を作れる整備士さんって本当に素敵ですね。こういうお店はまたお願いしたくなります」といった、整備士さんを称える声が届いています。
買い替えられない、「主人との思い出」が詰まったミラココア
けいさんが「ミラココア」を新車で購入したのは、2012年ごろ。実は、この車を買い替えられないのには深い理由がありました。
5年前に病気で亡くなったご主人。「ミラココア」は、買い物やネコの病院、名古屋へのミュージカル観劇など、ご主人との思い出が詰まった車なのです。たまにご主人が運転して帰ってくるときについた細かな傷さえも、今となってはいとおしい一つ一つだといいます。
「隣に主人がいるような気がして、なかなか買い替えられなくて」
SNSでの大きな反響に、けいさんは「たくさんの『いいね』をいただいて、うれしいやら恥ずかしいやら」と、素直な驚きを寄せてくれました。
「このコを買い替えてしまうと、主人との思い出もなくなってしまうんで、もう少し乗ろうと思ってます」。そう話すけいさんの「ミラココア」は、これからもきっと、すてきな思い出を乗せて走り続けていくことでしょう。