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48歳夫が脳梗塞で倒れ右半身まひ、要介護2認定 45歳妻、退院後の生活が不安 中2息子をヤングケアラーにしない支援の頼り方【社会福祉士が解説】

もくもくライターズ もくもくライターズ

45歳でパート勤務の佐々木三江さん(仮名)は、48歳で元会社員の夫と、中学2年生の息子の3人家族です。夫は2カ月前に脳梗塞で倒れ、右半身に麻痺が残り、要介護2と認定され、1カ月後に退院することになりました。退院後に始まる自宅での生活を想像すると、三江さんは不安でたまりません。

夫は、高齢者と同じようにデイサービスに行き入浴はしたくないと、三江さんと息子に介助してほしいと言っています。三江さんは仕事と家事だけでなく介護もしなければならないこと、さらに体格の大きな夫を支えて入浴させることは体力的には難しいだろうと考えています。さらに、受験を控える中学生の長男に大人の身体介護を担わせることには強い不安も抱いています。父親の介護をすることで息子の勉強や睡眠時間が削られてしまうのではないか、しかし夫の気持ちも理解できないわけではない、どうすれば家族の生活を守れるのかと悩みを深めています。

家族の思いやりと、子どもが過度な負担を負うヤングケアラーとの境界はどこにあるのでしょうか。本人の意思を尊重しながらも、子どもの未来と生活を守るための具体的な対応策や相談先を整理します。

家族の助け合いが子どもを追い詰める社会構造の課題

子どもが日常的に大人の介護や世話を担うヤングケアラーの問題は、家族の個人的な努力不足によって起こるものではありません。核家族化の進行や共働き世帯の増加といった社会構造の変化が背景にあります。親族のサポートを得にくい環境の中で、家族内にケアの負担が集中しやすくなっています。

こども家庭庁の調査によると、中学2年生の約17人に1人が世話をしている家族がいると回答しています。これは決して珍しいケースではありません。家族だから助け合うべきという思いやりの気持ちが、結果として子どもの学ぶ権利や子どもらしい時間を奪ってしまう逆転現象が起きています。

2024年6月に改正された「子ども・若者育成支援推進法」では、ヤングケアラーに対する国や自治体の支援が明確に位置付けられました。国を挙げて子どもを支援する体制が整備されつつあります。しかし、家庭内の問題は周囲から見えにくく、当事者である子ども自身も自分がヤングケアラーであると認識していない場合があります。子どもが本来享受すべき教育や休息の機会が損なわれていないか、周囲の大人が注意深く見守る必要があります。

境界線の確認と支援先への具体的な相談方法

「ヤングケアラー」というと、入浴や排泄などの身体的な介助を想像しがちですが、実際には「親の精神的な支えになる」「感情をコントロールするケアを強いる」「家庭内のトラブルを仲裁する」といった、目に見えにくいケアを担っているケースも非常に多く存在します。身体的な世話をしていないから大丈夫、と判断せず、子どもの表情や学校生活に変化がないかを多角的に見守ることが大切です。

子どもが行う手伝いとヤングケアラーの境界線は、その役割が子どもの心身の成長や日常生活に支障をきたしているかどうかで判断されます。学校の遅刻や欠席が増えていないか、睡眠不足になっていないか、友人関係に影響が出ていないかを確認することが重要です。

ケアマネジャーへ介護サービスの見直しを依頼
三江さんは、息子と自分の生活を守るために介護保険サービスの見直しを決断しました。まず、夫のケアプランを作成している担当ケアマネジャーに現状を相談しました。ケアマネジャーは介護保険制度を利用した支援を検討し、訪問入浴介護の利用を提案しました。

訪問入浴介護は、要介護1から5の認定を受けた人が対象となるサービスです。専用の浴槽を積んだ訪問入浴車でスタッフが自宅を訪問し、安全に入浴の介助を行います。費用は所得や要介護度、事業所が提供するサービス内容(加算等)により異なりますが、1割負担の場合、1回あたりの自己負担額は約1266円が目安です。

中学校のスクールソーシャルワーカーとこども家庭センターへも連携
同時に、三江さんは中学校の担任教師にも事情を伝えました。学校側はスクールソーシャルワーカーと連携し、息子の学校での様子を注意深く見守る体制を整えました。さらに、市区町村に設置されているこども家庭センターにも相談をつなぎました。こども家庭センターとは、これまで別々の窓口が担ってきた妊娠・出産・子育てに関する相談と、子どもや家庭に関する福祉相談を、一体的に受け付けるための窓口です。ヤングケアラーに関する相談もここで一括して受け付けており、家庭の介護状況と子どもの生活環境をセットで捉え、福祉、保健、教育など多様な観点から継続的な『伴走型』の支援を行ってくれる機関です。ここに相談したことで、息子の学校生活のサポートと、夫の福祉サービスの調整という、家庭全体を支えるネットワークが構築されました。

介護と子育てを両立するために

三江さんがケアマネジャーや学校に相談したことで、夫の退院前に抱いていた大きな不安は少しずつ解消されました。訪問入浴介護を利用することで、夫が希望していた自宅での入浴を安全にできるようになりました。息子は身体介護を担う必要がなくなり、これまで通り放課後は部活動や受験勉強に専念することができます。三江さん自身の身体的、精神的な負担も大きくなることはなさそうです。

家族の病気や介護は予期せぬ困難をもたらしますが、それは前に進めなくなる壁ではありません。適切な支援機関とつながることで、次の生活へ向かうためのつなぎ目に変えることができます。家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや自治体の福祉窓口に声を届けることで、本人と家族の両方の生活を守れる可能性が高まります。

【出典】
こども家庭庁「ヤングケアラーについて」
https://www.google.com/url?q=https://www.cfa.go.jp/policies/young-carer&sa=D&source=docs&ust=1784613170383841&usg=AOvVaw36-78aQ0wBH2YvXr7f1zJV

「令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業費補助金」の採択案件の成果報告書の公表について
ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2021/04/koukai_210412_7.pdf

こども家庭庁「改正児童福祉法の施行について」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2067db91-4b40-455d-b11d-1bcdecb2e37d/1a08c441/20230516_councils_shingikai_shakai_katei_Mag6djKb_03.pdf

厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00073.html

厚生労働省「介護報酬の算定構造 介護サービス」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001195509.pdf

文部科学省「スクールソーシャルワーカーの活用」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06060513/001/019.htm

こども家庭庁「こども家庭センター」
https://www.cfa.go.jp/policies/kokasen

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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