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「家族の家事は対象外」介護保険の限界…同居の母を介護、仕事と介護の両立が困難になった42歳会社員 月1万円程度で利用できる“保険外サービス”とは?【社会福祉士が解説】

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東京都内で暮らす42歳の会社員、江藤さん(仮名)。フルタイムで働きながら、74歳の母を自宅で介護しています。母は2年前に脳梗塞を発症し、左半身に麻痺が残りました。要介護2の認定を受け、週3回のデイサービスと週2回の訪問介護を利用しています。ところが、訪問介護のヘルパーさんから「お母様のお食事は作れますが、江藤さんの分は作れないんです」と告げられ、困惑しました。仕事で疲れて帰宅し、母の夕食介助をしてから自分の食事を作る日々。「このままでは体が持たない」と限界を感じています。

介護保険サービスには、利用者本人以外への家事援助を原則認めないという制約があります。しかし、こうした"すきま"を埋める保険外サービスや地域資源を組み合わせることで、月額1万円程度の追加費用で、介護者の負担を大きく軽減できる選択肢が存在します。

介護保険サービスでは「できないこと」がある──同居家族への家事は対象外

介護保険制度は、高齢者本人の日常生活を支援するための社会保険制度です。訪問介護サービスは原則「利用者本人に対する必要な援助」に限定されており、同居家族のための調理や家族全員分の洗濯、庭木の剪定、ペットの世話などは対象外となります。

厚生労働省の通知によれば、訪問介護員(ホームヘルパー)が行えるのは「利用者本人が使用する居室の掃除」「利用者本人の衣類の洗濯」「利用者本人の食事の調理」といった、本人に直接関わる行為に限られています。

この制約は、限られた介護保険財源を真に必要とする高齢者に優先的に配分するという制度設計の結果です。しかし現実には、働きながら親を介護する世代にとって、「自分のことは自分でやれ」という前提が、仕事と介護の両立を困難にする大きな要因となっています。総務省の就業構造基本調査では、介護を理由に離職する人は年間約10万人に上るとされています。

保険外サービスで「すきま」を埋める──15分単位から頼める地域資源の活用法

介護保険でカバーできない部分を補うのが、自治体の独自事業や民間・NPOによる保険外サービスです。これらは通称「介護保険外サービス」とも呼ばれ、多様な選択肢が全国各地に存在します。

▼シルバー人材センターの活用

多くの市町村に設置されているシルバー人材センターは、原則60歳以上の高齢者が会員となり、軽作業や家事援助を有償で請け負う公益団体です。庭木の剪定や草むしり、窓拭き、電球交換、ゴミ出しといった幅広い作業を、比較的安価に依頼できます。

料金は地域によって異なりますが、一般的には1時間あたり800円から1500円程度です。月に1回、2時間の庭仕事と1時間の窓拭きを依頼した場合、月額約4000円の追加費用となります。

▼NPO・社会福祉協議会の有償ボランティア

各地の社会福祉協議会やNPO法人が運営する有償ボランティア制度では、15分単位や30分単位で細かく時間を設定し、「ちょこっと支援」を提供している例が多く見られます。たとえば30分500円で家事援助や外出付き添いを依頼できるケースがあります。

同居家族の食事作りも対象となることが多く、「1時間で本人と家族2人分の夕食作り」を週3回依頼した場合、1回あたり1000円、月額で約1万2000円の追加となります。民間の家事代行サービスが1時間あたり2500円から4000円程度かかるのに比べ、半額以下に抑えられます。

▼市町村独自の生活支援サービス

介護保険制度とは別に、市町村が独自に実施している生活支援事業もあります。「配食サービス」は、栄養バランスの取れた食事を自宅まで届けてくれる事業で、1食あたり300円から700円程度の自己負担で利用できます。毎日夕食を配食サービスで賄った場合、月額約9000円から2万1000円となります。

組み合わせで保険外サービスを月1万円台に抑える──現実的な予算シミュレーション

江藤さんのケースで、保険外サービスを組み合わせた場合の月額費用をシミュレーションしてみましょう。

・NPOの有償ボランティア(夕食作り週3回、1日1時間):月額約1万2000円

・シルバー人材センター(月1回、庭仕事・粗大ごみの搬出1時間):月額約3000円

合計:月額約1万5000円

この保険外サービスの金額に介護保険サービスの自己負担1万5000円を捻出できれば、江藤さんは週3日分の夕食作りから解放され、月1回の庭仕事なども任せられます。

また、自治体によっては「介護者支援事業」として、同居介護者向けに月額5000円から1万円程度の助成金を支給しているケースもあります。お住まいの市区町村の高齢福祉課や地域包括支援センターに問い合わせてみると、さらに負担を軽減できる可能性があります。

最も頼りになる相談先は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターです。介護保険サービスだけでなく、地域のインフォーマルサービスについても情報提供を行っています。また、ケアマネジャー(介護支援専門員)も重要な相談相手です。遠慮せず、「介護保険でカバーできない部分をどうすればいいか」と相談してみましょう。

なお、サービス内容や料金は地域によって大きく異なります。必ず事前に、お住まいの市区町村や地域包括支援センターに確認することをお勧めします。

◇  ◇  

江藤さんは、地域包括支援センターで紹介された有償ボランティアとシルバー人材センターを利用し始めました。週3回、夕食作りを任せられるようになったことで、仕事帰りの心の余裕が生まれ、母との会話も穏やかになったといいます。「介護は大変だと思っていたけれど、工夫次第で乗り越えられる階段に変わった」と江藤さんは語ります。

介護保険だけでは埋められない"すきま"は、地域資源との組み合わせで補うことができます。「介護=大変、高額」というイメージを払拭し、早期に地域資源を組み合わせることで、自分のキャリアとメンタルを守る選択肢があることを、ぜひ知っておいてください。準備に「早すぎる」ということはありません。「動こうかな」と思った今が、最初の一歩を踏み出すタイミングです。お住まいの地域包括支援センター、ケアマネジャー、市区町村の高齢福祉課に、気軽に相談してみましょう。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)
社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士、身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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