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固定残業なのに定時で帰るのは残業代泥棒? 「仕事が早い」会社員が抱いたギモン 「手当分は会社に居るのが筋」の上司発言は的外れじゃないですか【社労士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

IT企業で働く20代のAさんは、周囲から「仕事が早い」と一目置かれる存在です。しかし、本人はある悩みを抱えていました。Aさんの給与には「月30時間分の固定残業代」が含まれていますが、効率よく業務をこなすため、いつも定時過ぎには仕事が終わってしまうのです。

これに対してAさんは「残業代を先取りしているのに、定時で帰るのは残業代泥棒みたいで申し訳ない」という罪悪感を抱いているため、あえてスマホをいじったり、ゆっくり資料を作ったりして、30時間分の固定残業を消化するためにダラダラと会社に残っていました。そんな中、上司からも「手当を出しているんだから、その分は会社に居るのが筋だろう」とプレッシャーを感じる発言があり、Aさんのモヤモヤは募るばかりです。

Aさんのように固定残業代が給与に含まれている人は、必ず固定残業時間の分は残業をしないといけないのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞きました。

知っておきたい「みなし」と「固定」の違い

ー残業ゼロでも固定残業代は全額受け取る権利はありますか?

もちろんです。まず、世の中で混同されがちな「みなし残業」と「固定残業代」の違いを整理しましょう。本来の「みなし残業(裁量労働制など)」は、外回りなどで労働時間の算定が難しい職種に対し、実際の時間にかかわらず「8時間働いたとみなす」といった制度です。

一方で、Aさんのケースはおそらく「固定残業代制」です。これは労働時間をきっちり測った上で、あらかじめ一定時間分の残業代を定額で支払う仕組みです。この場合、実際の残業がゼロ時間であっても、会社は約束した手当を全額支払う義務があります。早く仕事を終わらせて帰るほど時給が上がる「効率化へのボーナス」だと捉えてよいのです。

ー規定時間を超えて働いた場合は追加で支払われますか?

固定残業代制であれば、あらかじめ設定された時間(Aさんの場合は30時間)を超えて残業した分については、会社は別途、1分単位で超過分の残業代を支払わなければなりません。

「定額だからどれだけ働かせてもいい」と勘違いしている経営者もみられますが、それは明らかな法律違反です。逆に、時間が余ったからといって手当をカットすることも許されません。

ー「手当の分は会社に居ろ」という命令は正当ですか?

業務上の必要性がないのに「手当分を消化しろ」と居残りを強制することは、正当な業務命令とはいえない可能性が高いです。

日本企業の悪しき習慣として「自分だけ早く帰るのは冷たい」という曲解されたチーム主義がありますが、やるべき仕事がないのに時間を拘束するのは生産性を下げるだけです。命令に従うためにダラダラと残業をすることは、結果的に会社全体の基本給が上がりにくい体質を作ることにもつながります。

本来であれば、「早く終わらせて帰る人」こそが、高い生産性で会社に貢献している優秀な人材です。ダラダラと残って頑張っているふりをする「頑張り主義」は、もうやめにしましょう。自分の時間を大切にし、短い労働時間で最大の成果を出すことこそが、これからの時代のスタンダードだと考えます。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ) 社会保険労務士/こころ社労士事務所代表
大阪府茨木市を拠点に、就業規則の整備や評価制度の構築、障害者雇用や同一労働同一賃金への対応などを通じて、労使がともに豊かになる職場づくりを力強くサポート。ネットニュース監修や講演実績も豊富でありながら、SNSでは「#ラーメン社労士」として情報発信を行い、親しみやすさも兼ね備えた専門家として信頼を得ている。

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