春の異動シーズンに、Aさん(40代女性)が所属している部署でも新卒の女性社員が配属されました。彼女は元気があり、仕事への取り組みも一生懸命です。そのため周囲との馴染みも早く、Aさんは職場の雰囲気も明るくなったように感じていました。
そんな彼女に対して、ある日の昼下がりにAさんは「仕事のペースはつかめてきた?無理していないといいけど」と声をかけました。すると彼女は「あ、うん!全然いけてます、大丈夫です!」と半タメ口のような口調で返事をしてきたのです。
その日の帰り道にAさんは「明るくていい子なのはわかっている。でも先輩や取引先の前でも同じ話し方をしてしまったら怒られてしまうかも……」と考え込みました。Aさんは彼女に対して注意すべきだとはわかっていても、「敬語を使いましょう」と伝えることがパワハラと受け取られないか、そして今までの良好な関係が壊れてしまわないか不安がぬぐえません。
ではAさんは彼女に対して、言葉遣いの注意をどのように伝えればいいのでしょうか。公認心理士の高橋晋作さんに話を聞きました。
部下のタメ口…どう伝えればいい?
ー部下の言葉遣いに違和感を覚えた場合、どのように受け止めて、行動すればよいでしょうか?
違和感を覚えたとき、すぐに動くより先に「観察→整理→対応」の順で考えると、うまくいきやすくなります。
これは、くだけた話し方が「この人だから気を許している」という親しみの表れのケースもあるためです。若者は敬語が使えないと決めつける前に、誰に対しても同じ話し方なのか、自分にだけなのかを観察してみましょう。
整理できたら、ケースに合わせて動きます。自分にだけであれば親しみの表れとして受け取ってもいいかもしれません。ただ、誰にでも同じ話し方をしているなら、注意するのではなくあなたのために伝えたいという姿勢で伝えましょう。
たとえば、「社内では今のままでよいけど、お客様と話すときに敬語を少し意識できると、あなたの印象はさらによくなると思う」といった言い方です。批判ではなく、応援として受け取ると相手も素直に聞き入れやすくなります。
また、Aさんの言葉遣いのような傾向が職場全体にあるなら、個人への指導だけでは解決しません。研修を設けるなど、「学ぶ環境をつくる」発想で組織ごと動くことを検討しましょう。
ー「敬語を使ってほしい」と伝える際、相手に受け入れてもらいやすい言い方はありますか?
相手に受け入れてもらうには、伝える前の関係づくりがポイントです。日頃から「最近どう?困っていることはない?」と気にかけ、話しやすい雰囲気を作りましょう。信頼関係がある状態で伝えた言葉は、同じ内容でも受け取られ方がまったく違います。
いざ話すときは、間違っていると指摘するより、相手の話し方の背景に関心を向けることが先です。そのうえで、なぜ必要かという理由をセットで伝えましょう。
たとえば「敬語って堅苦しいルールじゃなくて、場の雰囲気を読んで相手との距離感を調整するスキルなんだよね。それが自然にできると、社会でも得をするよ」のような言い方だと、相手も前向きに受け取りやすくなります。
一度伝えてすぐ変わらなくても焦らなくて大丈夫です。伝えて終わりより、一緒に育てる感覚で関わり続けることが、長い目で見て本人の成長につながります。
ー注意することで関係が悪化しないためのポイントは何ですか?
まず、注意することで関係が壊れることはありません。むしろ「どう伝えようか」と悩むこと自体が、相手への敬意の表れです。鍵になるのは、伝えるときのスタンスです。あなたが間違っているという指摘ではなく、一緒によい職場をつくっていきたいという姿勢で話しましょう。
また、なぜ会社が言葉遣いを大切にしているのかを伝えることも有効です。「この会社はお客様との信頼を何より大切にしている。その信頼を言葉でも表現できる人でいてほしい」というメッセージは、規則への服従ではなく、文化への共感として受け取ってもらえます。
相手を尊重しながら誠実に向き合えば、注意したことが二人の関係をむしろ深めるきっかけになります。
◆高橋晋也(たかはし・しんや) 公認心理士
某県の義務教育学校校長、キャリアコンサルタント、組織キャリア開発士、第18回東京商工会議所認定ビジネスマネジャー検定合格。YouTubeチャンネル『心とキャリアを整える相談チャンネル』では、職場で働く皆さんのための“相談チャンネル”です。公認心理士としての専門性、キャリアカウンセリングの知識、組織キャリア開発士、第18回東京商工会議所認定ビジネスマネジャー検定合格、そして教育現場で培った経験をもとに、組織マネジメントや人材育成に役立つ内容をお届けしています。
また、相談活動でよく聞かれる“職場のあるある”を図鑑のようにわかりやすく紹介。管理職の方から若手社員まで、それぞれの立場で抱える悩みやモヤモヤの解決につながるヒントを発信していきます」そして教育現場で培った経験をもとに、組織マネジメントや人材育成に役立つ内容をお届けします。
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