tl_bnr_land

「駅で暴漢に襲われて…」大ウソで警察出動!罪に問われる?【弁護士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

営業マンのAさんは、その日、会社の命運を握る大口契約の商談を控えていました。しかし、目覚めると、約束時間の1時間後でした。キャリアに傷がつくことを恐れた彼は、最悪の嘘をついてしまいます。取引先に電話を入れ、駅で暴漢に襲われて怪我をし、動けない状態であると告げたのです。

これに対して取引先は、善意からすぐに警察へ通報しました。現場には複数のパトカーが駆けつけ、辺りは騒然となります。後に引けなくなったAさんは、警察官に対し「犯人は刃物を持っていた」と架空の人物像を必死に説明しました。しかし、周辺の防犯カメラには襲撃の様子はおろか、不審者の姿すら一切映っていませんでした。

目撃情報との矛盾を突かれたAさんの嘘は、数時間の取り調べであっけなく崩れ去りました。この場合、Aさんは罪に問われるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。

刑事罰のみならず、社会的信用を失いかねない

ー嘘の犯罪被害を警察に通報し、警察官を出動・捜査させる行為は、どのような罪になりますか?

このような行為は、主に「偽計業務妨害罪(刑法233条)」に問われる可能性が高いです。虚偽の情報によって警察官という公務員の業務を妨害したとみなされるためです。偽計業務妨害罪の法定刑は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

また、軽犯罪法第1条16号(虚偽の申告)にも該当し得ます。さらに、もし「特定の誰かに襲われた」と具体的な名前を挙げて虚偽の被害を訴えた場合は、より重い「虚偽告訴罪」に問われる可能性もあります。

ー実際に嘘の通報により、偽計業務妨害罪が問われた事例はありますか。

実際に似た事例として、「両親から預かった現金950万円をひったくられた」と虚偽の通報をした女性が、偽計業務妨害容疑で書類送検される方針となったケースがあります。

この女性は借金返済のために嘘をつきましたが、警察は防犯カメラを解析し、付近を走るバイクを全て割り出すなど大規模な捜査を行いました。その結果、嘘が露呈し、刑事罰の対象となったのです。

実質的な被害者が身内(両親)であったことなどから「起訴を求めない意見」が付きましたが、通常、公共性の高い警察業務を身勝手な理由で著しく阻害した場合、起訴されて前科がつく可能性が十分に考えられます。

ー警察の捜査にかかった費用(人件費、ガソリン代など)を損害賠償として請求されることはありますか。

警察組織そのものが人件費などの実費を民事で請求することは、現行の運用では多くありません。しかし、社会的制裁はそれだけでは済みません。

このAさんのケースのように、虚偽の通報によって取引先が業務を中断したり、現場周辺の店舗が営業妨害を受けたりした場合、それらの民間企業から損害賠償を請求されるリスクがあります。

刑事罰のみならず、社会的信用をすべて失うという、金銭に換算できない甚大な損害を被ることは間違いないでしょう。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース