交通事故や自転車事故に巻き込まれた際、「保険に入っているから大丈夫」「相手の過失が100%なら安心」と考える人は少なくありません。 しかし実際には、契約内容や制度の仕組みによって、被害者であっても十分な補償やサポートを受けられないケースがあります。2025年に反響を呼んだ記事で紹介された事例を紹介します。
保険会社は「自分が支払うお金が発生しない交渉」を代行できない
交通事故の被害者になった場合、「相手が100%悪いなら保険会社がすべて対応してくれる」と思いがちですが、実際には思わぬ落とし穴があります。信号待ちで停車中に追突された30代女性Aさんは、ドライブレコーダーの映像などから過失割合10:0と認定されましたが、自身の保険会社から「示談交渉は代行できない」と告げられました。
これは、被害者側に過失がなく、保険会社が保険金を支払う立場にない場合、示談交渉を行うと非弁行為にあたるためです。つまり、保険会社は「自分が支払うお金が発生しない交渉」を代行できず、Aさんは加害者側保険会社と自ら交渉する必要がありました。
しかし、交渉相手は経験豊富な保険会社であり、被害者は不利な立場に置かれがちです。通院や仕事を続けながら、書類の準備や補償内容の確認を行う負担も大きく、レンタカー費用や慰謝料が想定より減額されるケースもあります。こうした事態に備えるには、弁護士費用特約への加入やドライブレコーダーの設置が有効だと、ファイナンシャルプランナーの金子賢司さんは指摘しています。
信号待ちで追突され車は全損ところが「保険会社は交渉しません」!?“過失ゼロ”なのに「示談は自分で」…直面した自動車保険の“落とし穴”
自転車事故で小学5年生の家族に約1億円の賠償命令 「月額わずか数百円」でできた備え
自転車は気軽な乗り物ですが、事故が起きた場合の法的・金銭的リスクは非常に大きくなることがあります。ある事例では、小学5年生の男児が夜間、ヘルメットやライトを着用せずに自転車で走行し、60代の女性と正面衝突しました。女性は重い脳挫傷を負って植物状態となり、将来的に介護が必要な状態に。治療費や慰謝料、後遺障害逸失利益、将来介護費などを含めた損害賠償額は、総額で約1億円にのぼりました。
加害者となった男児の家族は、自転車事故を補償する保険に加入しておらず、自宅を売却し、分割で賠償金を支払うことを余儀なくされたといいます。
FPによると、こうした自転車事故の賠償は、個人賠償責任保険でカバーできる場合が多く、火災保険や自動車保険に特約として付帯しているケースも少なくないといいます。契約内容を確認すれば、追加の保険料を支払わずに補償を受けられる可能性もあります。過去には自転車事故で数千万円規模の賠償が命じられた例もあるため、補償額は1億円程度を確保しておくことが望ましいとされています。
自転車事故で小学5年生の家族に約1億円の賠償命令住宅売却まで…家族の人生を一変させた現実と「月額わずか数百円」でできた備え【FPが解説】
「自動車保険に入っていたのに」ひき逃げに遭い骨折、収入ゼロに…しかし車外歩行中は“保障対象外”
歩行中の交通事故であっても、加入している保険の内容によっては、十分な補償を受けられないケースがあるといいます。近所のスーパーへ徒歩で買い物に向かっていた40代の女性Aさんは、横断歩道を渡ろうとした際、右折してきた車に巻き込まれ転倒しました。ドライバーは一時停止せず、そのまま逃走。Aさんは約6メートルはね飛ばされ、左足骨折や骨盤輪骨折、軽度外傷性脳損傷(MTBI)などの重傷を負い、入院や手術、長期の通院を余儀なくされました。集中力の低下などの後遺症もあり、職場復帰は困難な状況となりました。
Aさんは自家用車を所有しており、自動車保険(人身傷害特約付き)と医療保険に加入していましたが、人身傷害特約は「自動車搭乗中のみ」を補償対象とする限定型で、歩行中の事故は対象外でした。医療保険も入院給付金が支払われたのみで、通院費や休業損害は補償されませんでした。さらに、無保険車傷害特約は死亡または重度後遺障害が条件で、治療中の生活費には対応できなかったといいます。
FPによると、自動車搭乗中のみ補償するプランと、歩行中も補償されるプランの保険料差は年間数千円程度の場合も多く、補償範囲の確認が重要だとしています。
自動車保険に入っていたのに」ひき逃げに遭い骨折、収入ゼロに…しかし車外歩行中は“保障対象外”だった 被害者が直面した盲点とは