珠洲市の水道施設の復旧に携わった水道局に取材
2回の断水を復旧させるため、飲み水などを運ぶ応急給水に日本各地の水道局、水道事業者が関わっていました。
「水道事業体で構成されている『公益社団法人日本水道協会』(以下、日本水道協会)では、災害が起きた時は被災地の応援に当たることになっています。日本水道協会には地方ごとに支部があり、愛知県と石川県は中部9県からなる中部地方支部に所属。名古屋市は中部地方支部のなかで支部長となる都市のため、石川県で起こった災害で2度に渡り携わることになりました」(名古屋市上下水道局の防災課の松井さん)
今回は、「名古屋市上下水道局」と、珠洲市での復旧に携わった「仙台市水道局」を取材しました。
「地震から復旧も、豪雨で土砂に…」
名古屋市上下水道局は、地震発災当日の深夜に現地入りし、6月上旬まで復旧に尽力。豪雨は翌日の9月22日に現地入り、12月4日まで作業を続けました。
防災課の松井さんは、「地震の時は被害がかなり大きく、取水施設(川などから水を引きこむためのダムや堰、取水口、導水管など)の全体が壊れてましたので、復旧に時間がかかり、断水も長期化しました。すぐにでも直したかったのですが、それができなくて大変でした」と振りかえります。
地震による大規模な被害は、職員の“滞在”そのものにも影響。発災直後、名古屋市上下水道局は珠洲市と七尾市を中心に復旧にあたっていましたが、七尾市には宿泊できたものの、珠洲市には発災当初、宿泊施設を確保できず。
「最初は隣の能登町に宿泊して、時間をかけて珠洲市に通っていました。復旧が進むにつれ宿泊地も珠洲市に近づいてきて、最終的には珠洲市内に宿泊施設を構えるように。宿泊地が転々としたことでの負担感はありました」
また豪雨の後は「地震から復旧したところが土砂で埋まったり、川にある水道管が破損したりしていました。水道管は河川を横断するような形で渡してあり、増水すると支えている部分が水の勢いで流れて壊れてしまったのです」。河川や山間部に被害が集中したようです。
こういった復旧工事や給水の様子をSNSで公開。1000人程度だったフォロワー数が5500人近くまで増えた同上下水道局。
「能登関係の投稿をすると『いいね』が一桁くらい違うので、それだけ関心が高いのでしょう。『地震に続き、大雨の時もありがとうございました』などのコメントも頂きました。普段の仕事でほめられることがないのでありがたかったです」
2つの災害からの水道復旧を振り返り、松井さんは次のように語ります。
「地震や豪雨などの災害時、断水するリスクがありますので、水の備蓄をしていただきたい。日頃から啓発しているんですが、災害時はより実感することになりました」
「バックアップが困難な状況」が復旧の遅れに
1月15日から5月1日まで珠洲市での復旧に携わった仙台市水道局にも取材しました。
水道危機管理室の浪岡さんによると、東日本大震災への対応の経験が活かされたそうです。
「危機管理マニュアルを整備し毎年更新していた応援派遣の手順や、派遣者の事前登録、応援派遣用装備セットの準備など日ごろからの備えが有効でした」。また、「日本水道協会」による東日本大震災の経験を踏まえた対応として、「発災後早期から地区ごとに地方支部を割り当てるパッケージ支援」「組立式仮設水槽(給水タンク)を活用した運搬給水」があったと言います。
浪岡さんは、今回の珠洲市での水道の復旧で難しかった理由は、3つあったとのこと。
1)取水施設・導水管(川などから引き込んだ水を浄水場に送る)・浄水場・送水管(浄水場から水を溜める配水所まで水を送る)等の基幹部の被害が多く、復旧までに長い時間を要した。
2)半島の末端という地理的要因もあり、被災地近辺での宿の手配が困難であったため、現地までの往復に時間がかかるなど作業時間の制約もあり、厳しい条件下での作業だった。
3)1つの浄水場が、1つの水道管の管路によって、水の供給先である地区につながっている状態であり、バックアップ(水を他の浄水場等から融通すること)が困難な状況であった。
1)と2)は、名古屋市上下水道局と同様で、被害の大きさ、復旧のための滞在の困難さがうかがえます。
3)については、災害発生時に断水を長引かせないために、別の浄水場の地区同士で水が融通できるように水道管の複数系統化(冗長化)を進めている地域もありますが、珠洲市では震災以前に対応されていなかったようです。震災後、珠洲市の復興計画として、近隣自治体と連携してのバックアップ体制の強化が議題にのぼっています。
仙台市水道局が石川県で行った応急給水や水道の復旧といった応援活動については、公式サイト内の「令和6年能登半島地震に伴う石川県での応援活動について」で公開。応援活動も含めた取り組みについては公式Xアカウント(@sendai_suido)で発信されています。
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水道局への感謝を発信した「珠洲製塩」の塩は大阪の老舗料理屋などでも使用されているとのこと。小沼さんは「断水の中でも塩づくりを続けてきたので、一生懸命作った塩をぜひ味わっていただければ」と語ります。また、Xでは能登を支える方法として「ボランティア、義捐金、加賀地方での観光」を挙げつつ、「能登には素晴らしい製品やおいしい農産物、海産物があります。お手元に能登のものを置いてみてはいかがでしょうか」と、能登産の物品を買い支えることを提案しています。
また、取材中に印象的だったのは、輪島市出身の真酒谷さんの言葉。輪島の朝市が地震によって“燃えた”と報じられたことについて、「燃えたのは『朝市通り』で朝市そのものは燃えてないんです。ネットとかでいろんなふうに言われているけれど、現地に来て欲しいと思っています。書く前に、言う前に」。被災地の情報を発信する立場、それを受け取る立場、それぞれのあり方が問われているようでした。
■珠洲製塩公式Xアカウント(@suzuseien) https://x.com/suzuseien
■珠洲製塩公式通販ページ https://suzuseien.jp/ec/
■名古屋市上下水道局 公式Xアカウント(@jogesuidonagoya)https://x.com/jogesuidonagoya
■名古屋市上下水道局 公式サイト内「令和6年能登豪雨に伴う上下水道局の応援活動について」 https://www.water.city.nagoya.jp/category/notooame2024/161697.html
■仙台市水道局 公式Xアカウント(@sendai_suido) https://x.com/sendai_suido
■仙台市水道局 公式サイト内 「令和6年能登半島地震に伴う石川県での応援活動について」https://www.suidou.city.sendai.jp/nx_html/09-bousai/09-603.html