「2024年問題」によって運転手不足はますます深刻に
2024年度より、バス運転手の健康を確保し事故を防ぐために、労働時間に関する規制が改められました。規制が変わることにより、バス運転手の勤務時間が1日単位、1ヶ月単位、1年単位でより短く制限されます。これが「2024年問題」を生み出すと言われています。
「2024年問題」の何が問題かを見るために、変更される規制を1つ具体的に紹介しましょう。2024年度から、勤務終了から翌日の勤務開始までを11時間(最低9時間)あけるよう規制が変更されています。以前は8時間あければよいルールでした。例えば、道路渋滞などにより到着が予定より数時間遅れてしまったとしましょう。その場合でも、勤務終了時刻から翌日の勤務開始までの休息時間はルール通り確保しなくてはなりません。その結果、翌日のバス運行に同じ運転手の出勤が間に合わない場合は、別の運転手を手配する必要があるのです。
事故を防ぐという観点からは、労働時間に関する規制を見直すのは重要です。ただしその分、運転手の勤務体制を万全に整えるのは難しくなります。そのため、運転手がさらに足りなくなり、貸切バスの手配はより難しくなるでしょう。限られた運転手で運行計画をどう進めていくか、バス会社は難しい舵取りに直面しています。
運転手不足は貸切バスだけの問題ではない
ここまで見てきた通り、貸切バスの運転手不足は今後も続きそうです。なお今回は貸切バス業界の状況を見ましたが、乗合バス(路線バス)やタクシーなども運転手も大きく不足しています。広く経済を見渡すと、物流や運送などの業界でも同じ問題が生じています。
将来的には、自動運転技術やドローンなどの技術が導入されることで、運転手が足りない問題は解決されるようになるでしょう。しかし、これらの技術が日本中へ広まるには時間がかかります。それまでの間、公共交通や物流、運送にかかるコストを社会でどう分担しあうべきなのか、議論を進める必要があります。
◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。