生きたくても生きられなかった猫を見たからこそ、この命は助けたかった。そんな優しさによって命を紡ぐことができたのは、黒猫おはぎちゃん。
元野良猫のおはぎちゃんは交通事故に遭い、瀕死状態だったところを飼い主さん(@ohagi_0408)の旦那さんに助けられた。
車に轢かれた瀕死状態の子猫を保護
2023年10月3日、仕事中だった旦那さんは道路に横たわるおはぎちゃんを発見。日頃から轢死の猫を見かけることが多かったため、「この子も車に轢かれて亡くなってしまったのか…」と悲しい気持ちになった。
だが、おはぎちゃんにはまだ息があり、血を吐き、体を痙攣させながら生きようともがいていたそう。そこで旦那さんは動物病院へ。辛そうに震える姿を見ながら、「なんとか助かってほしい」と願った。
実は飼い主さん夫婦、おはぎちゃんと出会う3カ月前、1匹の地域猫を救えず後悔していたそう。
「おひげちゃん」と呼んでいたその猫は、よく自宅前に遊びに来ていたが、飼い主さんらが仕事に出かける直前、車に轢かれ、目の前で亡くなった。
「泣きながら抱き上げ、棺にフードやおやつを入れて葬儀をあげました。だから主人はおはぎを保護した時、おひげちゃんに試されていると思ったそうです」
胃ろうの手術を終えた後に起きた“嬉しい奇跡“
おはぎちゃんは口と鼻から血を出し、しきりにくしゃみ。鼻に血が詰まり、呼吸がしづらそうに見えた。動物病院では肺に穴が開いていることが判明。すぐに酸素室へ入った。
「夫は仕事中だったので、携帯番号を記載した名刺を渡して職場に戻ったそうです」
翌日、お迎えに行くと肺の穴は治りつつあることが分かり、一安心。しかし、瞳孔の反射がなくて目が見えていない可能性があることや歩行にふらつきがあり、一カ所を回り続けているため、脳に障害が残った可能性があることを告げられました。
加えて、おはぎちゃんは食事を全く食べていなかったそう。そこで獣医師と相談し、胃ろうの装着手術を受けることにした。
「一生取れないかもしれないと言われたので、胃ろうの手術は本当に悩みました。でも、そんな状況も全部受け入れ、この子を家族としてお迎えしたかったんです」
手術後は、胃に穴を開けて通した管からご飯やお水を補給することになった。
「胃ろう用のドライフードはふやかしてペースト状にするのですが、ゆっくり入れないと逆流してしまう可能性があり、フードの水分を多いと胃ろうの穴から漏れてしまうので慎重に入れていました」
だが、おうちに迎えた翌日、予期せぬ変化が起きる。なんと、飼い主さんのアシストを受けつつ、おはぎちゃんは口からご飯を食べてくれたのだ。
念のため1週間ほどは口と胃ろうの両方で食事を摂らせたが、献身的なサポートによって体調は徐々に快方へ。胃ろうは1カ月半ほどで外れ、幸い他の部位に事故の後遺症が現れることもなかった。
「いつかは動物をお迎えしたいと夫婦で話してはいたけれど、おはぎの保護は我が子が産まれる前でしたので正直、予想外ではありました。でも、お世話をする中で子どもがもうひとり増えたような感覚になり、嬉しかったです」
0歳児を“弟”のように想う優しい愛猫
飼い主さん夫婦は今、0歳の息子さんとおはぎちゃんに日々、癒しを貰っている。
「おはぎはお尻にトントンするなど、ちょっかいをかけると口を開けたまま怒ります(笑)調子に乗ってやりすぎると手を噛まれますが、その後ペロペロ。怒っているのか甘えているのか分からなくてかわいい」
おはぎちゃんは、息子さんの子守りもしてくれる。弟だと思っているのか、一緒に遊んだりお昼寝をしたりし、夜泣きをした時には必ず起きて寄り添う。
ただし、息子さんばかり構われていると抗議の粗相をするそう。そんな“構ってアピール”も飼い主さんにとっては微笑んでしまう愛情表現だ。
「私たちは、おはぎに出会う運命だった。あの子は私たちの立派な娘です」
そう話す飼い主さんは、動物を助ける際には覚悟が必要だと訴える。「覚悟」とは、手を差し出したからには最後まで責任を取るという決意だ。
「状況によっては残酷な選択をしなければならないこともあるかもしれませんが、そうした心構えが必要なのだと思いました」
そう感じるのは、保護した動物を動物病院に預けたまま音信不通になる人がいるという話を耳にしたことがあるからだ。その子の未来を守るためにも、「命を救いたい」と思った時には自分の生活環境や保護した猫に病気が見つかった場合など、“かわいいの先”を慎重に考えることも大切だ。
「保護後、動物病院に行く時は身元を証明できるものを提出するのがベターだと思います。そうすれば、獣医師も安心して治療にあたれるから」
命を救うことの尊さや厳しさも伝える飼い主さんの経験は、命を救うという行動に伴う現実や覚悟を見つめ直すきっかけにもなるはずだ。