1971年から1974年生まれの「第二次ベビーブーム世代」が50代を迎えた今、大定年時代を前に「老後のお金がない」「定年後の働き口どうしよう」といった不安を抱く人は少なくありません。「ひとり身」の場合、不安はさらに増すことでしょう。
そんな中、興味深い書籍が刊行されました。「人生後半のひとり暮らしを穏やかに楽しむ 60代から90代の身軽な住まいと豊かな日々」(スマイル・エディターズ・編、主婦と生活社)本で、60代から90代までの6人の「ひとり暮らし女性」を紹介しています。
「お金」「働く」ことを主体にせず、「自分らしさ」「ワクワク」を優先させた高齢女性のリアルが浮き彫りになっています。
「食費1万円」でもお金の不安なし
紫苑さんは現在73歳。東京都内の一軒家で暮らしていますが、この家を購入したのは8年ほど前の65歳。貯金をほぼ使い果たし、フリーライターとしての仕事が激減。定期的な収入は月5万円の年金のみとなりました。この5万円で衣食、光熱費など生活費をまかなうことになりますが、最も節約したのが食費。かけられるのは月1万円です。
これだけを聞けば、さぞ過酷な食生活を想像しますが、紫苑さん自身は「心も体も満たされるようになった」「お金の不安なし」と本書で語っています。
「1か月に使える金額のうち、まずは食費を1万円と決め、安い・美味しい・簡単・体にいいをテーマに月1万円でできるレシピを考えるようにしました。
~中略~
すると2か月を過ぎたあたりから、筋トレ代わりに始めた散歩の効果もあってか、体がしっかりしてきたな、という実感があったのです。
~中略~
さらに食費を抑えるためとの理由もあり、スイーツ類をあまり食べないようにしたことで、長年の悩みだった持病(過敏性腸症候群)もすっかり完治。70歳を超えても食生活を変えることで体は変えられるのだ、ということを身を持ってわかったのは嬉しい驚きでした」(本書より)
91歳Xユーザーの指針は「さぼりたいときはさぼる」
現在91歳の大崎博子さんは、78歳でパソコン+X(旧ツイッター)デビュー。1970年代に出産後に離婚。娘さんのロンドン留学をきっかけにひとり暮らしをスタートしました。「寂しいといえばそうかもしれません」と言いながらも、「おひとり様な分、ひとりで気ままに生活できています」とも。そして、何より大事にしていることは「自分の思うまま」「健康」だと本書で語っています。
「たくさんの人が見てくれているからといって、無理に合わせたりしません。さぼりたければさぼればいい。人生には余裕が必要です。誰にどう思われても気にしない、自分の思うままを表現する、それに尽きるだけです。
~中略~
人のことを気にするとそれだけでストレスになる。ストレスから病気にだってなる。だから、人のことは気にせず、自分が好きなことをやるといいと思います。わが道を行くでいいのです。
~中略~
病気になったら、どうあがいても病気のことばっかり考えちゃう。そして、人にも迷惑をかけちゃう。人に迷惑をかけずにいるというのも私の大切な仕事。改めて、健康でいるということは幸せなことだと感じています」(本書より)
「年齢を重ねた先輩たちの生き方が参考に」
本書はこの他4名の女性を紹介していますが、お金などの物質的な豊かさとは一線を画し、自分らしさやワクワクを大切にしている様子が、オシャレなビジュアルと文章でまとめられています。
本書の担当編集者にも聞きました。
「本書に登場する皆さんは現在のご自身の暮らし、人生をとにかく楽しんでいらっしゃいます。驚くのは、皆さん60歳を過ぎてから、現在のご活躍につながる活動をスタートされていること。人生の後半を、自分自身のために、気負わず前向きに楽しんでいる姿が印象的でした。物価高が続く昨今、なかなか明るい兆しは見えてきませんが、これからをどう過ごすべきか、年齢を重ねた先輩たちの生き方が参考になるかもしれません」(編集者)
「こうすべき」「こうあるべき」といった内容ではなく、ゆったりのんびりした本全体の構成も心地よい一冊。「自分らしさとは何か」を優しく考えさせてくれる良書だと思いました。ぜひチェックしてみてください。
『人生後半のひとり暮らしを穏やかに楽しむ 60代から90代の身軽な住まいと豊かな日々』スマイル・エディターズ・編(主婦と生活社)
https://www.amazon.co.jp/人生後半のひとり暮らしを穏やかに楽しむ-スマイル・エディターズ/dp/4391161656