「私は今年で60歳になりますが、大人になった気がしません」古書店主のつぶやきに広がる共感「名言だ」「ちょっとほっとしました」

山本 明 山本 明

 「私は今年で60歳になりますが、いまだに大人になった気がしません。」というひと言から始まる、古書店主さんのつぶやきがX(Twitter)で共感を呼んでいます。

 つぶやきは以下のように続きます。

 「最近やっと気づいたのは、大人とは『なる』ものではなく、『としてふるまう』ものだということです。来年からは大人としてふるまおう。」

 36万件以上のインプレッション数を獲得したこのつぶやきを投稿したのは「澄田喜広 古本よみた屋 @吉祥寺」(@sumida01)さん。澄田さんは「女と男と子どものための総合古書店 よみた屋」(東京都武蔵野市吉祥寺)の代表者です。同店は心理・思想・趣味・アートの古本が充実した、本好きのための気軽で本格的な古書店なのだそう。

 投稿を見た人たちからは「名言だ」「私もかく有りたい」などと澄田さんへの称賛、賛同の声が上がったほか、

「はじめまして。昨年還暦を迎えた者ですが、ここ近年は『立場を弁えよう』『世間様から見て恥ずかしくない自分であれたら』と思っております。…道はまだ険しいです」
「今日の自分の見栄未熟な振る舞いににうわーっとなっていたところだったので、救われた心地です…。明日からまたありたい振る舞いをしよう。それでいいんだ、できることはそれだけだと気が付きました」
「たまたま拝見しました まったく同感です。もんもんと過ごしていたのでちょっとほっとしました」

 などと心を動かされた人たちからの長めのコメントも届いています。

 投稿の経緯を澄田さんにお聞きました。

「大人である」とは内面の問題ではなく…

――最近、「大人としてのふるまい」について考える機会があったのでしょうか?

今年還暦を迎えることになり、ふと自らを省みると「大人になったらわかる」と言われていたようなことが全然わかるようになっていませんでした。しかしながら当然社会的には大人であり、大人として扱われます。

――そうですね。

内面の成熟は人それぞれで、若くして立派な人も、老いてなお未熟な私のような者もいるわけです。そこで、大人であるとは内面の問題ではなく、周囲から大人に見えるようなふるまいを指すのだと考えました。

「大人であることは一種の役割。周期の人が期待する責任を果たしているということ」

――子どもの頃、「大人」は非常に賢い、成熟した存在に見えていました。どんな人生の難局もクールにクリアしていける…というような。

子どもから見れば、大人は難問を簡単に解決しているように見えますが、大人には大人なりの解決不能な問題があり、やはり子どもと同じように迷い戸惑いながらたどたどしく生きているものです。

――見た目では分からない、と。

もちろん人にはそれぞれ能力があり、何の憂いもなく過ごしているように思える人もいますが、実際には有能な人はその有能さに見合った苦労を抱えているのではないでしょうか。大人であることは一種の役割であり、周囲の人が期待する責任を果たしていることが大人であることです。

――見事な答えです。

しかし「大人の責任」のような客観的なものはなく、どのような責任が課せられるかは、情況や立場や人物によって違っているのだと思います。

「大人」としてふるまう準備は万端…?

――投稿に広く共感の声が寄せられました。

大人のフリをしながらも自身の内面を「大人ではない」と感じている人が多数いることがわかりました。大勢の方に共感していただいて驚きました。内面の成熟はさておき「自分も大人としてふるまおう」と、肯定的に捉えてくださる方が多くてありがたかったです。

――「来年からは大人としてふるまおう」とおっしゃっていました。実践できそうですか?

「来年から」というのは「明日からがんばる」と同じような言い回しです。つまり、大人としてふるまわなければならないことはわかっているけれど、まだその準備はできていない、自分にはできないという自虐的ユーモアのつもりでした。実際には、よほど子供っぽいふるまいをしなければ、大人のふるまいであると認めていただけるのではないでしょうか。ダメですか?

 「ダメですか?」という部分に澄田さんの心の広さ、優しさがありますね。まるで、社会のあらゆる持ち場で、自身の未熟さにへこみつつも懸命に生きる一人一人の心に寄り添い、エールを送ってくれているかのようです。大人としてふるまうためには何よりもまず、寛容さこそが必要なのかもしれませんね。

【古本よみた屋】
 経験30年以上の店主の経営する総合古書店。「人の手から手へわたってきた古い本を熟読しよう。同じ本を何度も読み返そう。そしてそれを、心の中で朗読するようにゆっくりと読もう」という「スローリーディング宣言」のもと5万冊以上の在庫を所蔵し、毎日何百冊もの古本を販売中。流行を追いかけるのではなく、店主の目利きにかなった「多くの人には受け入れられずとも一部のファンを強く惹きつけるような」専門書や趣味の本が店内には並んでいる。所在地は東京都武蔵野市吉祥寺南町2-6-10、アクセスは中央線および井の頭線「吉祥寺駅」南口を出て井の頭通りを渋谷方向に徒歩2分

古本よみた屋HP|https://yomitaya.co.jp

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