16歳高校生 生まれて初めて切った髪をヘアドネーションに 130cmのロングヘアがきっと誰かの役に立つ

山陽新聞社 山陽新聞社

病気などで髪の毛を失った子どもたちにウィッグ(かつら)を贈る「ヘアドネーション」のため、岡山県倉敷市の女子高校生が生まれてから16年間伸ばし続けた髪に初めてはさみを入れた。130cmもの長さになるまで育んできた思いとは―。

今月上旬、岡山市内の美容室に現れたのは、超ロングヘアの高校1年生平田心絆(ここな)さん(16)。つややかさを保ちながら膝まで達した黒髪が、大切に手入れしてきた年月を物語る。

伸ばし始めたきっかけは母の愛さん(47)だった。一生に一度の記念にしようと生まれて初めて切った髪を使う「赤ちゃん(胎毛)筆」を作りたいと考えた。筆にするにはある程度の毛量が必要だが心絆さんは少なめだったため、十分な長さになるまで待つことにした。

成長に伴い、今度は心絆さんが自分の長い髪を気に入る。小学生になると「ディズニーアニメのプリンセスみたい」と友達から褒められるようになり、トレードマークになった。

転機は6年生の時に読んだ山陽新聞の記事がもたらした。白血病で髪を失った経験がある中学生がヘアドネーションに挑戦していると知り「私もいつか人の役に立ちたい」。調べると最短のショートでも31cm以上、最も長いスーパーロングは60cm要る。不足しているというロングの提供を目標に伸ばし続けると決めた。

日々のケアは苦労の連続。髪を乾かすのに時間がかかり、ドライヤーだと40分も当て続けないといけない。ポニーテールにしようとして腕がつった日もあった。おしゃれな髪形を楽しむ同級生がうらやましくなり散髪したくなったこともある。そのたびに「この髪で笑顔になる人がいる」と自分に言い聞かせた。

美容室での初めてのカットを前に「愛着が湧いていたので悲しいけど、わくわくもしている」と話した心絆さん。美容師が少しずつゴムで結んで作った束を切っていく。心絆さんと愛さんもそれぞれはさみを握った。毛束はきれいに袋詰めし、横浜市の大学生が運営する支援団体に送った。

「人を思いやれる心を持ってほしいと思って育ててきた。寂しい気持ちもあるけど、また次の目標を見つけてチャレンジしてほしい」と挑戦を後押ししてきた愛さん。心絆さんは「頭が軽くなって、自分じゃないみたい」とカットの体験を喜びつつ「髪を失った子どもたちがウィッグでおしゃれを楽しみ、笑顔になってもらいたい」と晴れやかな表情を見せた。

散髪後もまだ髪は背中まである。やってみたい髪形を探しながら、今度はショートの提供へ向け、しばらく伸ばすつもりだ。

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