前脚のないジャックラッセルテリア
こなつちゃん(2歳・メス)は、アニマルホーダー(劣悪多頭飼育者)の高齢者が飼っていた。その高齢者は50匹くらい飼っていて、こなつちゃんは小さい小屋に入れられ、ノミダニだらけになっていたそうだ。保護団体が保護して里親に迎えられたが、わずか3日後に脱走、1ヶ月近くも見つからなかったという。こなつちゃんは、その間に事故に遭い、前脚を1本失った。保護団体は、2度とそのような思いをさせないと、新たに里親を募集したという。
千葉県在住の緑川さんは、2匹目の犬を迎えようと半年ほど前から悩んでいた。
「犬を迎えるとなるとお金も必要だし、時間も取られます。最期まで面倒をみる覚悟もいります。子犬は可愛いけど、ペットショップで買うという選択肢はなく、困っている犬を助けたいと、譲渡サイトを見ていたらこなつが出てきました。『脚が一本ない!なんてこと!』と思いました。」
運命の出会い
それからというもの、緑川さんはこなつちゃんのページを開けたり閉じたりを繰り返した。
栃木の団体まで行くには時間も作らなければならなかった。
「どうしようか考えていたら、三郷のIKEA(埼玉県)で譲渡会をするという情報が。そこにこなつがいる団体さんも参加していたのです。仕事が入ったら行けないなと思っていたのですが、その日は何の予定も入らず。こなつがいるかどうかは分からなかったのですが、その譲渡会に参加しました。まるで運命の出会いのように譲渡会場にこなつがいて、その場でトライアルの予約をしました」
半月後、家にこなつを連れてきてもらい、少しお散歩の練習をした。団体のスタッフが帰ってしまうと、こなつちゃんはキャリーの中に入ったまま出て来なかった。
「怖いんだろうな・・・知らない場所と知らない人たちばかりと思いましたが、先住犬のはるおにはすぐに懐きました」
3本脚でもたくましく生きる
ゴールデンレトリバーのはるおくんの次に迎えた子なので、名前には「なつ」を入れたいと思い、こなつちゃんという名前にした。
こなつちゃんは、かなり「女王様」な性格だが、はるおくんがいないとダメ。ずっとぴったりくっついている。しばらくしたら階段の上り下りもできるようになった。お散歩はずっと歩いていると疲れるのか止まってしまうことがあるが、頑張って歩いているという。
「3本脚なので、たまに顔から突っ込んでしまって顔が泥だらけになってしまうこともありますが、全然平気な顔をしてまた歩き出すので、強いなぁとこっちが励まされます」
「人は障害があると、かわいそうだなとか自分とは違うんだなと無意識に思うかもしれませんが、動物は、そんなふうに思わないんです。引け目を感じることもなく、同情してほしいと思うこともない」
緑川さんは、こなつちゃんと暮らして教えられることがたくさんあるという。