廃棄処分された1万円札6億円分の「裁断くず」を再活用した城模型展示「郷土の人たちの心に残るアート作品を」福澤諭吉ゆかりの地・大分中津 

西松 宏 西松 宏

福澤諭吉が青年期までを過ごした故郷・大分県中津市では現在、1984年以来40年間にわたって1万円札の顔であり続けた福澤諭吉の功績を讃える「不滅の福澤プロジェクト」が官民挙げて行われている。中津城3階展示室では、今月1日から、廃棄処分された1万円札6億円分の裁断くずを城模型に貼り付けた「開運の中津城模型」が常設展示され、注目を浴びている。

制作したのは中津城を運営する株式会社千雅商事の社員たち。汚損などで流通に適さない紙幣は裁断、リサイクルされるが、「中津城は福澤先生を輩出した中津藩の象徴。長年世間で使われ役目を終えた裁断くずを城の模型に貼って再活用することで、郷土の人たちの心に残るアート作品を残そうと企画しました。現在行われている『不滅の福澤プロジェクト』の一環として、厳重な管理、法令遵守のもと制作、展示しています」と同社の担当者は話す。
 
制作はまず、中津城天守閣とやぐらの模型(実際の20分の1)を木材で作り、同社社員や城の職員計6人で、1片が幅2ミリ、長さ15ミリと極小の裁断くずを木工用接着剤で貼り付けていった。完成までに4ヶ月を要したという。「気の遠くなるような作業でしたが、仕事の合間などに職員らが一丸となって少しずつ進めました。柱など細部にもこだわりました」(同)

今年7月には1万円札の肖像が変わる。地元では「さびしい」との声も聞かれるが、この開運の中津城模型のことがテレビや新聞などで年始に報道されて以来「一目みたい」「縁起がいい」などと大勢の人が訪れている。細かく裁断されているため、目を凝らしてよくみても一万円札の面影はほとんどないが、「よく作ったなあ」と息をのむ人も。
 
「不滅の福澤プロジェクト」は、福澤諭吉が思想家や教育家として残した業績を改めて振り返り、数々の功績を後世へと語り継ぐ基盤を作ろうという取り組み。中津市や中津商工会議所、慶應義塾、日本銀行などの団体で構成され、特別企画展、講演会など様々なイベントが行われている。福澤は「コルリ」という言葉でカレーを日本国内に初めて伝えたことでも知られ、市内の飲食店では「諭吉カレー」を巡るスタンプラリー(3月10日まで)も行われている。この春、興味ある方は大分・中津を訪れてみては。
 
「中津城」ホームページ http://www.nakatsujyo.jp
「不滅の福澤プロジェクト」ホームページ https://fukuzawa-project.com/ffproject

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