福岡県内のとある場所にあったリサイクルショップ。同店の店主が近所で暮らす外猫にエサやりをしていました。
しかし、2024年に移転。ずっと店主からエサをもらっていた外猫たちはしばし店舗跡付近で過ごした後、別のエサ場を求めて姿を消しました。しかし、1匹だけここから離れようとしない猫がいました。
「連れて行くことはできないし、エサやりももうしない」と店主
この猫は、エサをもらっていた店主にだけ心を開いていた様子で、それ以外の人間が近づくと逃げたり威嚇する様子でした。明らかに体の状態が悪そうで、ここから離れようとしないのは「動けない」という理由もあるようでした。
この猫の存在を知ったのが近所のYさん。福岡県のボランティアチーム、わんにゃんレスキュー・はぴねすのメンバーでもあり、この猫を前に放っておくことはできませんでした。
かつてエサやりしていた店主の連絡先を調べて事情を説明。「何とか1匹だけ猫を連れて行ってくれませんか」と頼みましたが、返答はノー。「それならエサやりに来てやってもらえませんか」とお願いしましたが、それもノー。
この猫だけが本当に行き場を失うこととなりました。
日に日に凶暴になっていく猫を前にYさんが一大決心
この猫は「エサも、寝る場所も、仲間も何もない」同店付近に居続け、近くの駐車場のクルマの下で過ごし、クルマのエンジンが掛かれば、別のクルマの下へと潜り込みという生活を、雨の日も暑い日も毎日ずっと続けていました。
近所の猫嫌いの住民からは邪険にされ始め、満足なエサも得られず体調も悪化したことからか、日に日に猫の目がつり上がり、凶暴さが増しているように映りました。経緯を見続けてきたYさんは、ここで一大決心を。
「誰も世話をしてあげないのなら、私が保護してこの猫の世話をする!」
保護以降、猫の表情が途端に柔らかくなった
あれだけ凶暴さが増しているようにも映る猫です。保護する際には逃げたり、威嚇してきたりと相応の抵抗がありそうにも思います。
Yさんはそれを覚悟して保護に向かいましたが、何とYさんの前で猫はすんなり言うことを聞き、ケージの中にも素直に入ってくれました。
そして、つり上がった表情が一気に柔らかくなりました。そして、Yさんの部屋のベッドに招くと安心した表情を浮かべスヤスヤと眠りにつくのでした。
動物病院での診断では、猫エイズ陽性ですでに発症していることがわかりました。そのため、そう長くは生きることはできないでしょうし、他の猫と一緒に生活することも難しいことから、この猫の里親募集はかけず、最期の日を迎えるまでYさんがお世話をし続けることになりました。
最後にはぴねすの代表が、こんな話もしてくれました。
「『外猫は自由に過ごせるから良い』という人が多いですが、猫に理解のない地域での生活は『自由』よりも、もっと大きな危険と飢えと縄張り争い、病気、虐待、事故などのリスクを背負って、1日1日を必死に生きています。『そうであっても、人間とともに生きるより、外で暮らすほうがいい』と主張する猫も確かにいます。しかし、やはり外での生活は危険だし、猫のトイレ問題などで迷惑をしている人たちもいます。外猫がこれ以上増えないよう、TNR活動はとても重要で、私たちもできる限り続けていこうと思っています。そして、動物も私たちも同じようにこの地球で生きています。圧倒的に強い立場の人間が、弱い立場の小さな命を守れる社会になると良いなと思います」
わんにゃんレスキュー・はぴねす
http://happines-rescue.com/