昭和の頃、町の小さな駄菓子屋などでよく売られていた「権利関係が怪しげ」なアイテムたちを覚えているでしょうか。当時流行していた漫画のキャラクターや特撮ヒーローなどをモチーフにしたと思しき、実に味わい深いイラストがあしらわれた類似品や“パチモン”たち。世の子供たちを魅了した(そして時に落胆させた)あれらは今、どこに行ってしまったのでしょうか。ビックリマンやハリマ王の伝説、ガムラツイストなどのシール類を多数所有し、パチモンを愛するコレクターのHokuto199xさん(@Hokuto199x2)に取材しました。
2024年12月、Hokuto199xさんが突如Xに投稿した「星(せい)ちゃんシール」。誰がどう見ても「聖闘士星矢」のパチモンです。「収納箱の中から、星ちゃんシールの束が出てきた。まったく身に覚えがない。」とHokuto199xさん。他には一体どんなコレクションがあるのでしょうか。
「所持品は種類が色々ありすぎて何から話せばよいか…」とHokuto199xは切り出しました。
「まずシールやカードはそれぞれファイル10冊以上はありまして、分類していないものは棚のある小物入れや収納箱の中に保管しています。所持シールの種類は、ビックリマンシール(ロッテ)をはじめ、マイナーシール…例えばドキドキ学園(フルタ製菓)、ガムラツイスト(カネボウ食品)、秘伝忍法帳(エスキモー)、ハリマ王の伝説(カバヤ)などです」
そしてもちろん、先述した星ちゃんシールや「ロッチ」のようなパチモンのほか、さらには自作シール(同人シール)などもあるとのこと。カードについては、有名どころではSDガンダムやドラゴンボールカードダス(バンダイ)、神羅万象チョコ(バンダイ)など。その他、古いおもちゃやテレビゲーム、映像媒体、書物なども所持しているそうです。
「最もお気に入りのものは、エニックスから出たファミコンソフト『ドラゴンクエスト3』(箱付き)です。私はドラクエ3ほどの感動はプレイステーション3の『デモンズソウル』まで待たなければなりませんでしたので、思い入れは深いですね。最もお宝的な価値があるものは…難しいですね、選べないです。ただ、私のコレクションの量や質は、他のコレクターからすればまだまだだと思います。シール交換会やSNSなどで出会う人達の熱量は凄まじく、私などコレクターとしてはひよっこです」
さて、本題である類似品やパチモンについても聞いてみました。
「当時駄菓子屋にあったガチャガチャや引き物には、おそらく無許可のものも多数ありましたね。デフォルメウルトラマンは、商品袋の記述を見る限り版権もののようです。オマケシールの王道『ビックリマン』(天使VS悪魔シールなど)は絵柄もしっかりしていて当然良いのですが、私はどうもそこから派生した類似品やパチ物に強く惹かれる性分のようです」
「類似品にもそれぞれ設定がきちんとあって、世界観も作り込まれていますよ。絵柄もそうですが、ネーミングセンスも味があって良いですね。例えば、秘伝忍法帳の『轟天コマ吉』なんて思わずクスッと笑ってしまいますし、変に脳裏に残ります。パチ物の中でもコピー品は正規品とは異なる色使いでカラフルなものもあったり、手書き品は絵柄のゆるい感じがたまりません」
「一方、自作物は、作家さんの『俺はこれが好きなんだ!』『私ならこう作る!』といった思いを感じ取れるところが魅力です。コレクションは単なる懐古主義から来ているわけでもないように思いますが、シールやカードを見てハァハァする…こういう感覚に陥るって何か未知の病気なんですかね。シール収集熱は一度引いてはいたのですが、2023年に『関西シルクリエイト』という自作シールイベントに参加したことで再燃してしまいました。この病気はふとしたことで再発するようです。同イベントは2025年も開催されるようなので、興味のある方は参加してシール文化に触れてみてはいかがでしょうか」
「星ちゃんシール」などのパチモンは、今はまず作られることはないでしょう(当時はOKだったという意味ではありません)。Hokuto199xさんは、こうした“文化”をどう思っているのでしょうか。
「当時は1980年代になりますが、まだ商店街は賑やかで活気がありましたね。駄菓子屋も沢山ありました。パチ物も店頭に普通に並んでいましたし、今思うとお宝の山です。規制もゆるくおおらかな時代だったように思います。でも、当時と同じ雰囲気の商品は、実は今も駄菓子屋や土産物屋なんかで販売されていたりするんですよ」
Hokuto199xさんから送られてきた画像を見て思わず笑ってしまいました。「ロッチ」の魂は令和の時代にも受け継がれているようです。