まさかエリート副支店長が「998万円着服」 金庫の札束を「模造札」にすり替えて…バブル期の銀行で起きた大胆悪事 なぜバレてしまったの?

八幡 康二 八幡 康二

銀行の副支店長といえば、年収が1000万円を超えるようなエリートのイメージです。しかも30年以上前のバブル時代という背景を考えると「庶民が羨む生活なのでは?」と思う人も多いでしょう。しかし、当時は必ずしも羽振りのよい生活ができたわけでは無いようです。元銀行員Sさんが銀行員時代に見聞きした副支店長の不祥事について伺いました。

Sさんは現在50代後半で独立されて個人事業主をされている男性です。今から30年ほど前にメガバンクに入行し、2000年代に入ってすぐに課長代理職のポジションについたそうです。

札束の一番上と一番下に「本物の紙幣」を残し…

――副支店長の不祥事について、そもそもどうやって知ったのですか?

私が普段通り勤務をしていると、別の支店の副支店長の急な退職通達が回ってきました。通常、退職通達に書かれている内容は「定年退職」「依願退職」ですが、その時は「懲戒解雇」と書かれていたため興味を持ったのです。

当時の銀行では、例え職務怠慢が目立っても書類を偽造しても、銀行のお金に手を付けることがなければ「懲戒解雇」になることはないと教わっていたため、その副支店長が銀行のお金に手を付けた可能性があると推測できました。

ちなみに、副支店長は課長代理よりもかなり上の役職というのもあり私と面識のない人物でしたが、40代前半でかなり仕事の出来るという噂はよく耳にしていました。

――ではどんな不祥事だったのでしょうか。

不祥事が発覚したのは2000年代の初めころです。懲戒解雇となった副支店長は、なんと銀行の金庫にある現金を札勘定の練習のために使う模造札と入れ替えて盗んでいたのです。札束の一番上と一番下に本物の紙幣を残し、その間の紙幣はすべて模造札にすり替えていました。盗んだ金額はなんと998万円だったそうです。

副支店長なんて、不自由なく贅沢な生活ができそうなのに…

――えー!副支店長なら収入も多そうなのになぜそんなことをしたのでしょうか?

確かに副支店長ともなると収入もあるため、不自由なく贅沢な生活ができるイメージがありますよね。でも現実は違います。

世間の会社員と同様に子どもの教育や住居に費用がかかりますし、お小遣い制度の人も多いです。さらに副支店長は自分の立場を強くするため、仲間の行員を引き連れて会合を開くこともあります。もちろん費用は副支店長が全額払うわけなので、お金はいくらあっても足りなかったのでしょう。

――因みにどうやって副支店長は現金を模造札とすり替えていたのですか?

休日出勤を装って出勤し、その間に上手くすり替えていたようです。

――そんなことが可能なのですか?

当時の副支店長は金庫の鍵と、金庫の中にある現金庫の鍵の両方を持っていたので銀行内の現金を自由に触ることができました。休日出勤も日頃からやっていたそうで、副支店長を怪しむ人はいなかったようです。

――なるほど。ではどれくらいの期間、すり替えは続いていたのでしょうか?

正直いつからやっていたのかは分かりません。ただ、その支店への赴任時期から考えると1年以上は続けていたはずです。監査の際には、事前にカードローンで現金を用意し、監査のタイミングのみ模造札を現金にすり替えて誤魔化していたそうです。

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