徳川将軍も堪能したリンゴがシードルに 滋賀・彦根の住民ら開発で本格販売へ

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 彦根市を拠点に活動する「結(ゆい)のまちづくり研究所」(河原1丁目)が、地元住民が育てた「彦根りんご」の保存会と連携し、彦根りんごを使ったシードル(リンゴ酒)を初めて完成させた。このほど関係者や市民が味わい、出来栄えに自信を見せており、来年以降の本格販売を目指すことになった。

 彦根りんごは江戸時代、彦根藩主が幕府や将軍に献上していた和リンゴで、お盆の頃にピンポン球ほどの大きさの実をつける。大型の西洋リンゴの普及などで1955年ごろに栽培が途絶えたが、市内の農家らの「彦根りんご保存会」の前身グループが2004年ごろから復活に取り組んでいる。

 シードルは、同研究所代表の柴田いづみさんが「住民の悲願・彦根城の世界遺産登録の暁に乾杯しよう」と発案。今年は猛暑で例年の半分の収穫量だったが、8月に市内で収穫した約60キロを、長野県飯綱町の林檎学校醸造所に陸送。素材を生かす手法で醸造され、完成品105本(1本330ミリリットル)が17日、研究所に到着した。

 ボトルには彦根城をイメージしたデザインのラベルが貼られ、同日夜、完成を祝う会が研究所近くで開かれた。関係者や市民約30人が早速、乾杯して味わい、保存会の八木原俊長会長(81)は「これほどおいしくできるのかとびっくりした。酸味や甘みがバランス良く、彦根りんごをかじった時の味がした」と満足そう。リンゴの加工品を調査している滋賀県立大3年加藤綾さん(21)は「実の味が凝縮され、香りも爽やかで飲みやすかった。多くの人に彦根りんごを知ってもらえる商品になれば」と話した。

 研究所は酒類販売業許可を取得しており、来年以降の本格販売を目指す。保存会も量産に向けて栽培本数を増やしていく方針で、柴田さんは「今回は関係者みんなの努力が実り、すごくおいしく喜んでもらえた。来年はもっとたくさんの方に味わっていただけるよう、盛り上げていきたい」と話した。

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