阪神とオリックスという関西勢同士が激突するプロ野球SMBC日本シリーズ2023。その日本シリーズで今から64年前、日本のプロ野球で初めての“ある儀式”が行われました。それは「ビールかけ」。優勝チームに所属していたアメリカ出身の選手が欧米流に喜びを表現したことが始まりでした。日本のプロ野球には欠かせない恒例行事の歴史を調べました。
「南海優勝!キリンで乾杯!!」
1959(昭和34)年、日本シリーズは読売ジャイアンツと南海ホークスが対決。南海はエース杉浦忠投手が開幕から4連投4連勝という偉業を達成し、日本一に輝きました。
祝勝パーティーの席で南海の助っ人選手、アメリカ・ハワイ出身のカールトン半田選手とサディナ選手はメジャーリーグ流のシャンパンファイトを再現。優勝に導いた杉浦投手にビールをかけ、激投をねぎらいました。これが日本のプロ野球のビールかけの始まりといわれています。
この席で提供された瓶ビールは「キリンビール」の商品でした。
同年11月に発行されたキリンビールの社内報には、「南海優勝!キリンで乾杯!!」の大きな見出しとともに、「1959年度パンフィック・リーグのペナントは4年ぶりに南海の手に握られた。ペナント獲得がきまった去る10月4日、後楽園での大毎一南海24回戦の直後、南海チームは東京での定宿、中野ホテルの食堂に集合、まずキリンで乾杯。ついで半田、サディナといったアメリカでのプロ野球経験者が、アメリカの例にならいエース杉浦の頭にキリンをぶっかけてその労をねぎらい、優勝をよろこび合った」とあります。
キリンホールディングス(本社、東京都中野区)の現在の担当者に話を聞くと、歴史に名を残したことについて、「プロ野球のセレモニーとして60年以上継続していることは選手の皆さまにとっては大切なものだと考えます」と感慨深げでした。
2009年には楽天の野村克也監督が報道陣の前で「ビールかけは南海が最初だと思うよ」とコメントし、南海=日本初説を後押ししたことも。
新型コロナウイルスの影響で一時、自粛や非公開になった年もありましたが、2023年のリーグ優勝の際には阪神、オリックスともにビールかけを実施。阪神の会場には約4000本、オリックスには3000本のビールが運び込まれ、監督や選手らが大はしゃぎし、喜びを爆発させました。
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ビールかけを巡っては、以前からファンの間で「ビールかけに使われるビールはラベル不備などの不良品を使っているからもったいなくないらしい」といった噂がささやかれているそう。真相は。複数のビールメーカー担当者に尋ねましたが、「聞いたことはないですね」「お取り引きに関わる話になりますので…」など、はっきりした回答は得られませんでした。
今年、日本一を祝ってビールかけをするのはどちらのチームになるのか。日本シリーズは今夜開幕です。