雨の中、駐車場で鳴いていた子猫
ちくわちゃん(2歳5ヶ月・メス)は、2021年3月初旬、雨の降る日にアパートの駐車場で鳴いていた。生後2〜3週間くらいだった。鳥取県のYさんは、夕方、仕事から帰る時に鳴き声を聞き、気にしながら歩いていた。すると、車の下から出てきたという。
最初は親猫がいると思い、人間の匂いがちくわちゃんにつかないよう、触らずその場を立ち去ろうとした。しかし、ちくわちゃんは玄関先までヨチヨチついてきてしまった。
「『ごめんね』と言って、ドアを閉めました。ただ、ドアを閉めたものの、ちくわが気になりその場から動けませんでした。その間に友達にちくわを保護してもらえないか連絡をしていました」
一緒に暮らすか!
友達から「保護できる」と連絡が来たので急いでドアを開けたが、ちくわちゃんはそこからいなくなっていた。母猫が迎えに来たのかもしれないと思いつつ探してみると、さっきの車の下で丸まっていたという。
「母猫は見当たらなかったのでそのまま抱きかかえてアパートに入りました。濡れていたのでタオルで拭いて友達に写真を送り、迎えに来てくれるのを待ちました」
しかしその後、友達から連絡がきて「やっぱり飼えない…」と。一緒に暮らしている弟さんが写真を見て、「可愛くない」と拒否したそうだ。途方に暮れていると、友達が「飼えなくなってゴメン」とシャンプーを持って来てくれた。
「子猫を洗っていると一緒に暮らしていた彼(現在は夫)も仕事から帰ってきました。友達や同僚に打診してくれましたが全て断られて、何やら考え込んだ彼が、『一緒に暮らすか!』とひと言。家族として迎えることにしました」
ちくわちゃんは、鼻水や目やにで顔がグチャグチャだった。ただ、野良とは思えないほど本当に人懐っこい子猫で、甘え上手な女の子だったという。
「誰かのそばにずっとくっついて、動くとついてくるって感じです。寄生虫がいるだろうと思い、寝る時は隔離していたのですが、寂しかったんでしょうね…疲れて寝るまでずっと鳴いてました」
娘と暮らしているよう
昔から動物が好きで、子どもの頃の夢はムツゴロウ動物王国で働くことだったというYさん。
「子どもの頃は動物アレルギーがあって親に飼わせてもらえませんでしたが、いつか絶対に猫を飼いたいと思っていました。そんな時、可愛い出会いがありビビッときたんです」
名前は、イチゴちゃんやアズキちゃんなど、可愛い名前が候補に上がっていたが、なんとなくしっくりこなかった。
「保護した当時、猫に食べさせていい食べ物がちくわしかなかったんです。それを思い出してぼそっと『ちくわはどう?』と言ったら、彼が気に入って採用されました」
ちくわちゃんは、遊ぶ人と甘える人をちゃんと見分ける賢い子だという。
「私が遊んだりお世話をしたりする人で、主人には甘えるんです。私も甘えてほしくて、ついついかまいすぎると…噛まれます(笑)。かまってほしくないように見えるのですが、夫婦でお風呂やご飯等で部屋移動すると、1匹になるのは嫌なのかお風呂やトイレ、部屋移動も全てついてきます(笑)。すりガラスの扉越しにジーッと見られていることもあります」
ちくわちゃんを迎えて夫婦の会話はものすごく増えた。
「仕事が終わったらすぐ帰るようにもなりました。主人は実家で猫を飼っていましたが、その子とは兄弟みたいな感覚で一緒に暮らしていたそうです。ちくわは娘という感覚で、猫かわいがりしています(笑)」