これまでに約1000匹を超える行き場を失った猫たちを、新しい家族のもとへ送り出してきた、東京・港区周辺で活動する保護猫ボランティア団体・みなとねこ。積極的なTNRM活動を続けてきた団体でもあります。
TNRMの活動地域では、2014年には50匹いた地域猫たちも、毎日の餌やりで人馴れが進んだ子は保護して里親探しをすることにしました。中にはロードキルや病死などもありましたが、2022年には最後の1匹を保護して地域猫活動を終了することができました。
外で人馴れしていても家の中で一般の方が飼うレベルにまで慣らすには多少時間がかかります。みなとねこには預かりボランティアさんがおり、一般家庭で飼い猫たちと一緒に暮らしながらゆっくりと縁を待つと言います。
預かりボランティアさんの中には、千葉や埼玉在住で自身でも自宅付近の猫のTNRなど保護活動をしている方がいて、彼らが保護・譲渡したい猫たちもみなとねこの猫として譲渡会に一緒に参加するのだそうです。
そんなみなとねこの預かりボランティアさんが、地元千葉県のボランティアさんより預かりを頼まれた、バーバリーという2021年生まれのサビ猫がいます。このバーバリーも、前述のTNRM活動の中、ある大型団地の敷地内で見つかりました。
野良猫を捕獲・手術・リリースを行うTNR活動
TNRMとは、飼い主のいない猫を捕獲し、繁殖を防ぐことを目指し避妊去勢手術をし、再び元いた場所にリリース、その後は「地域猫」として見守ることを指します。手術を施したことがわかるよう片方の耳の先をV字にカットし、住民から食事や糞尿の世話をされながら屋外で生活していきます。
TNRM活動で捕獲されたバーバリーも、当初は術後に元いた場所へリリースされる予定でした。しかし、このエリアはもう10年以上前にTNRが済み、残っているのは先が長くないシニアの地域猫たちです。
お世話する側もかなり高齢になっている中、まだ若いバーバリーをこれからひょっとしたら20年最後までお世話していくことは難しいと思われました。そのため、地元ボランティアさんはバーバリーをなんとか人馴れさせて、新しい里親さんへ繋ぐことに方針を変えました。
他の猫を怖がってしまうバーバリー
生まれも育ちも外の猫だったと思われるバーバリー。保護当初は、なかなか環境に慣れず攻撃的で、懐く様子を見せてくれませんでした。しかし、人と日々顔を合わせ、食事を与えられ、声をかけてもらうことで次第に心を開いていきました。預かりボランティアさんの家に来てから4カ月が過ぎる頃には、人前でも仰向けで寝るほどリラックスするようになりました。
一方、この家にいる他の猫たちには一向に心を開こうとせず、ウーッと唸ることもありました。もしかしたら、外で過ごしていた頃、他の猫からいじめられたり、格闘した経験があるのかもしれません。他の猫は何も仕掛けていないのに、バーバリーが勝手に怒って唸ることから、ときには同居の猫ちゃんから逆に攻撃されることもありました。
そんな経緯からバーバリーは高齢の猫たちと過ごさせることにしました。高齢の猫は活発に動くことはないため、バーバリーも安心して過ごせるようになりました。
全てを受け入れてくれる里親希望者さんが現れた
猫に対する好き嫌いはあれど、食欲旺盛でごはんは残さずしっかり食べる健康そのもののバーバリー。1日の多くをベッドの中に隠れて過ごしているものの、大好きな預かりボランティアさんの姿を見かけると近寄ってきてスリスリと甘えるようにもなりました。
スタッフは、ビビリのバーバリーを思い、一人暮らしの方など静かで落ち着いた環境で、先住猫がいないおうちにと1匹でに譲渡できたら……と考えていましたが、まさにピッタリの里親希望者さんが現れました。
一定期間のトライアルを経て、すっかりこの方の家に馴染んだバーバリーは正式に、家族として迎え入れられることになりました。
もともとは、大型団地を彷徨いながら過ごしていたバーバリー。みなとねこのスタッフの献身的な世話とサポートのおかげで、見事幸せをつかむことができました。信頼を寄せる人間には思いっきり甘えるバーバリー。きっと今日も、新しい飼い主さんのもとで、愛情を独り占めにし、ひとりっ子生活を満喫していることでしょう。
※現在みなとねこでは特定の協力団体以外からの保護依頼などは受け付けておりません。