「食料がない時には、土手の可食草をおかずに」「土日祝日は家族みんな1日2食」…ひとり親家庭を対象としたフードバンク事業『グッドごはん』を運営する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(東京都大田区)が実施した「ひとり親家庭の困難状況」に関する調査において、ひとり親家庭が経済的に余裕がないことで何かを制限したりあきらめたりしている実態が明らかとなりました。
調査は、2023年6月、同事業の食品受取に申し込んだ首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)在住の利用者1450人、および近畿圏(大阪・京都・兵庫・奈良)在住の利用者1087人、計2537人を対象としてインターネットで実施されました。
調査によると、「現在の暮らしの状況」について、86.2%のひとり親が「苦しい」(大変苦しい:28.9%・やや苦しい:57.3%)と回答しました。
さらに、ひとり親になってから「経済的理由であきらめた経験があること」について複数回答で答えてもらったところ、「家族旅行・レジャー」(70.8%)、「自分の衣類を買うこと」(70.4%)、「子どもの習い事」(63.1%)、「家でエアコンやお風呂を使いたいときに使うこと」(45.2%)、「子どもの衣類を買うこと」(40.6%)などが上位に並びました。そのほか、回答者からは以下のようなコメントが寄せられています。
▽食料がない時には、土手の可食草をおかずにした。
▽子どもが部活や塾、 進学したい学校を諦めている。
▽収入が少ないために、子どもに習い事を諦めさせたことがとても悔しい。
▽仕事を休むと給料にひびくので、学校行事はほぼ行かない。
▽過去に生理用品が買えない時は精神的にもとても辛かったのを覚えている。
▽子どものお誕生日にホールケーキを買ってあげることが出来ずみんなで泣いてしまった。
▽土日祝日は家族みんな1日2食にしている。自分は平日も極力2食。朝から「お腹空いたー!」と連呼しているのを引き伸ばすのは、可愛そうで申し訳なく思う。
▽学校で販売される数千円の絵の具セットや書道セットさえ買えず、1番安いであろう物を近所で購入し少しでも可愛く見える様に工夫。
▽お風呂をためることをしてあげられなく、冬の時期はほんとうに申し訳ない気持ちでいっぱい。
次に、ひとり親の「自身の状況」について複数回答で教えてもらったところ、「実親のサポートが受けられない(他界、遠方等)」(28.8%)、「日常生活の悩みやストレスを相談できる相手がいない」(20.7%)、「持病がある」(20.4%)といった回答が上位に挙げられました。
なお、自身に関する困難な要素を複数抱えている回答者からは、以下のようなコメントが寄せられています。
▽自分が病気になって家にあった古い薬で何とか過ごしていた。病院に行ったら重病だったが働かないわけにもいかず苦しむために生きていると思うこともある。
▽病院で貧血を指摘され、食事を見直すよう指導を受けたが、肉や野菜は高くて手が出なせないので、子どもの分だけ用意している。
さらに、「子どもに関する困りごと」についても同様に聞いたところ、「勉強・学力」(53.8%)、「こころの不調」(27.4%)、「栄養状態」(21.1%)などが挙げられ、「子どもが塾に行きたがっているが経済的に厳しく断念している」「成長期の子どもに毎食食べさせることができないため栄養状態が心配」いった声が寄せられました。
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また、同NPO法人は、2023年1月~2月の期間に、首都圏(東京・神奈川・埼玉 )および 近畿圏(大阪・京都・兵庫・奈良)のひとり親922人を対象とした、「困窮するひとり親家庭の収入状況」に関する調査も実施しています。
2022年の収入額を調査した結果、回答者の47%が「世帯年収200万円未満」(100万円未満:16%・100万円以上200万円未満:31%)で暮らしていることが明らかとなりました(世帯年収には各種手当・養育費・同居家族の収入も含む)。
また、「新型コロナウイルス感染拡大後の就労収入」については、新型コロナウイルス感染拡大以前の2019年と比較して、就労収入が「減った」または「無くなった」と回答した人が全体の60%に及んでおり、ひとり親世帯の世帯年収が低い傾向に加えて、新型コロナウイルス感染拡大以降の減収も重なり、厳しい生活を送らざるを得ない状況がうかがえました。
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調査を実施した同NPO法人は、「困難な状況に置かれた子どもたちが社会から取り残されないよう、子どもの貧困を社会全体の課題として捉え、困窮家庭の生活状況の実態把握や改善に向け対応していくことが急務であると考えます」と述べています。