「この人と人生をともに過ごしたい」と思って結婚したはずが、さまざまな理由で離婚を選択する夫婦は少なくありません。厚生労働省が発表した「2020(令和2)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」では、2020年の離婚件数は19万3253組と報告されました。その一方で離婚後も、元配偶者との関係性がうまくいかないと、ときに大きな問題が起こることもあります。
子どもが2人いる40代のHさんは4年前に離婚しました。離婚から約半年間は元夫から養育費の支払いがあったため連絡をとっていましたが、養育費が滞ってから連絡は途絶えていました。それから約3年半の月日が経ったころ、突然元夫から連絡がきたのです。
突然の電話の内容は…
Hさんはいつもと同じように仕事を終え携帯電話を見ると、十数件の着信がありました。子どもに何かあったのかと慌てて着信履歴を確認すると、すべて元夫からのものでした。かけ直さないでいると、その日の夜遅くに再び元夫から電話がかかってきたのです。Hさんがもらえていない養育費について話そうと思い電話に出ると、元夫が発した第一声は「金、貸してくれ」という驚愕の一言でした。
Hさんが冷静に養育費を支払ってほしいと話すと、元夫は「この問題が終わったら払うから」とお金を貸してほしいとの一点張りでした。Hさんは子どもの教育費や生活費にお金がかかり、養育費もないため人に貸せるだけの経済的余裕はないと伝えると、元夫は「慰謝料を請求されているから、助けてほしい」と、これまでの経緯について話し出したのです。
慰謝料を請求された理由は、不倫でした。既婚者の20代の女性と不倫関係になり、女性は妊娠し離婚をしないまま、元夫と暮らすようになり出産したそうです。その結果、女性の夫が裁判で両者を訴え、離婚を含め子どものDNA鑑定などが必要な状況だと淡々と話す元夫に、Hさんはあきれて言葉も出ませんでした。
父親の状況を知った子どもの反応
Hさんは元夫に、「子どもたちの父親であるにもかかわらず、離婚後子どもたちのために何もしない自分の行動を今一度考えてほしい」と伝え、お金は貸せないと断りました。
その電話を聞いていたHさんの次男にあたる高校生のYさんは、あぜんとした表情を浮かべたあと笑っていました。翌日、HさんがYさんの様子を気にしていたとき、Yさんの携帯電話に元夫から電話がかかってきたのです。「おう、久しぶり!ちょっとやらかしちゃってさ…、Yからお母さんを説得してもらえないか」と。Yさんは「それは無理」と答え、電話を切りました。
Yさんの一言がきっかけで元夫からお金を貸してほしいという電話はなくなりました。これまで頑張って子どもを育てていかなければ!と思っていたHさんですが、今回の件で自分より冷静に対応していたYさんに頼もしさを感じ、予期せぬ夫からの電話でより家族の絆が深まったように感じたそうです。