とても大切な心構えを教えてくれる法話。毎回、「ネコ坊主」としてお言葉を発信する一向山 専念寺の25代目住職・籔本正啓さんに、詳しくお話をおうかがいしました。
――「自分へのシグナル」とは、深く考えさせられる言葉ですね。このような言葉を発信された理由を教えてください。
籔本さん:基本、法語は誰かというよりも自分の戒めや気づきを書いています。それを共感してくださったりまた意見いただりたして、こちらの勉強とさせていただいています。私自身もこの事は経験があり、自分の環境が変われば他人に対しての感情も変わると思っています。相手が変わるというよりも自分が変化しているということです。ですので僧侶としては、相手とのいい距離を保つということを心がけています。いわゆるバランスです。
――私も似た経験を何度かしています。そのうえで思うのですが、状況的にその人と距離が置けなかったり、相手がこちらに関わろうとし続けてきたりして、なかなかうまくいかないと感じてしまう方もいるのではないでしょうか。そのような場合、自分自身はどのように受け止め、心を構えたら良いのでしょう?
籔本さん:私はよく熊に例えているのですが、遠くで見る熊は可愛いい存在ですが近くにいる熊は怖い存在です。もし熊に出会ったらゆっくり後退りして逃げると思います。これは人間関係も一緒で合わないなしんどいなっと思ったらゆっくり後退し距離を置く。遠い距離だと合う場合もあると思います。
――急に一方的に離れるのではなく、少しずつ距離をとりながら、程よい関係を目指すのが良いのですね。また、反対に嫌いだった人が好きになることもあるのでは、と思いました。
籔本さん:嫌いだったとしても適正な距離感だと好きになる事はあると思います。それは自分自身が相手に対して適正な距離だと教えてくれるシグナルと解釈できます。
仏教徒にとって有難い存在であるネコに恩返し
専念寺は大阪市平野区にあるお寺です。その住職であり、SNSでは「ネコ坊主」としてためになる法話をたくさん公開されている籔本さん。それにしても、どうしてネコなのでしょう?
籔本さんにネコをモチーフにしている理由についておうかがいしました。
「仏教は元々、大陸の教えです。日本は多くのものを大陸から学びました。仏教伝来は漢字、建築、医療、政治などありとあらゆる面で影響を受けています。その大陸から海で運搬するときに日本に経典や書物をネズミから護ったのがネコなんです」(籔本さん)
仏教徒にとってとても有難い存在だというネコ。専念寺では、お経を納める蔵にはネコの絵が描かれているそうです。そんなネコではありますが、近年では繁殖が進むなどして、ネコ害が増えたことで殺処分の対象になることも。籔本さんは、人の都合で殺処分されてしまうネコが少しでも減るように、地域猫活動(※さくらねこ)の応援をしているといいます。
専念寺の御朱印のなかには、ネコの保護活動に一部寄付される「さくらねこ御朱印」もあるとのこと。
このように、籔本さんは人々が幸せになるための活動もされながら、お世話になったネコへの恩返しも行っています。
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大阪市平野区・喜連瓜破にある専念寺は、1597年に豊臣家の家臣を祀る為に創建されました。江戸時代から悪縁切り、人形供養のお寺としても有名です。
また、本堂の内陣には、京都・聖護院の尼僧が10年の歳月をかけて描いたという※迦陵頻伽(かりょうびんが)の絵があり、「日本一綺麗な迦陵頻伽」とも言われています(拝観は要予約)。
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※さくらねこ…去勢・不妊手術が施され、その目印として耳先を桜の花びらの形にカットされたネコ
※迦陵頻伽(かりょうびんが)…仏教における想像上の生物。上半身が人間、下半身が鳥の姿なのが特徴