「その美しい右目に、幸せをたくさん写して」…片目を失ったが、人間大好き!底なしにやさしい性格!ハンデのある猫の賑やかな日々

古川 諭香 古川 諭香

美しい右目に、これからも幸せをたくさん写し出していってほしい―…。そんな気持ちにさせられるのは、醤油ママさん宅で暮らす黒猫の醤油くん。醤油くんは子猫期、左目を失い、片眼となった。だが、その日常は幸せなものだ。家の中を自由に走り回り、2匹の同居猫たちとのスキンシップも楽しんでいる。

祖母宅の裏庭に現れたボロボロの子猫を保護

醤油くんは、飼い主さんの祖母宅の裏庭に現れた子。猫風邪をひき、目は腫れ上がり、ボロボロの状態だった。

その姿に、おばあさんは心が痛んだが、自宅には気難しい老猫がいたことや自身の年齢を考慮し、2匹目の猫を迎えたいと思っていた飼い主さんに子猫を託すことに。子猫は、おばあさんが数日間ご飯を与え、人慣れをさせた後、飼い主さんに引き渡された。

祖母宅から飼い主さんの自宅へは、車で2時間ほどの距離。運転中、醤油くんはキャリーケースの中で驚くほど静かにじっとしていたため、飼い主さんは生きているのか心配になったという。

当時、醤油くんは生後4カ月ほど。猫風邪による鼻水と目やにがひどく、衰弱していた。

特に酷かったのは、白濁していた左目。角膜の潰瘍が破れ、眼球の内容物が失われている状態だった。

「回復が見込めなかったので、保護から1カ月後の体力が回復したタイミングで全身麻酔での眼球摘出手術をすることになりました」

どんな状態であろうと自宅へ迎え入れることは決めていたが、ハンデを持つことになった猫が幸せでいられるのか、飼い主さんは不安だった。

だが、その不安は獣医師の温かい気遣いによって和らいだそう。獣医師は、カラスに突かれて片目になった愛猫に会わせてくれたのだ。ふっくらした健康そうな、その猫を見て飼い主さんは、前向きな気持ちになれた。

手術は、無事成功。白濁していた右目や疥癬でボロボロの状態だった皮膚は、処方薬で治すことができた。

保護前に、おばあさんから優しくされたため、すっかり人間好きになっていた醤油くんは人馴れ訓練をしなくても、自然と家族に染んでいったそう。

気が合ったのか、先住猫のルーくんも醤油くんを大歓迎した。

「仲間ができたことに大喜びで、ちょっとしつこいくらいでした(笑)」

妹にゃんこも増えて日常はより賑やかに

人の家族からも猫の家族からも歓迎された醤油くんは保護当初からは想像もできないほど、美しく大きな大人にゃんこに成長。

ただ、甘えん坊な性格は変わらず、飼い主さんが寝る時は必ず一緒にベッドへ行き、腕枕でスヤスヤ。

「ただ、私が寝ると自分の寝床に戻っていくので、なんだか寝かしつけられているように感じます(笑)」

片目であるため、初めて目にする高所は苦手で、同居猫と追いかけっこをしてキャットステップを駆け上がる時には、稀に慌てて踏み外しかけることはある。だが、家の中を自由自在に駆け回るアクティブな姿は、ハンデがあることを感じさせない。

醤油くんには、大好きな妹もできた。キジトラ猫のミリンちゃんだ。ミリンちゃんを迎えた時、醤油くんは優しく近寄り、挨拶。懐が深いお兄ちゃんになってくれた。

「ミリンちゃんと醤油くんは、よく走り回っています。ものすごい勢いで走っているのに追いついた時、醤油くんはミリンちゃんに軽くタッチするだけなので笑ってしまいます」

一方、お兄ちゃん猫ルーさんの前では弟の顔に戻る。

「体の大きさも力の強さも、ルーさんに勝っているのですが、普段は大人しく従っています。ただ、あまりにも理不尽なことをされるとキレます(笑)。ボスのルーさんと新入りのミリンちゃんの間に挟まれた醤油くんは、中間管理職的な立場なのかもしれません」

ルーさんはワンテンポずれながら、醤油くんとミリンちゃんの追いかけっこに参戦することも。醤油くん同様、ミリンちゃんには甘く、おやつを横取りされても黙って許すのだとか。ほどよい距離感で交流を深め続ける3匹の関係性に、飼い主さんは日々、目を細めている。

「今、醤油くんは元気いっぱいで、かわいい姿をたくさん見せてくれています。彼は、底なしに優しい性格です。もし、ハンデのある猫さんとの出会いがあったら、獣医さんや色々な人の話をきいて理解を深めてほしい。その出会いは、とても貴重なものだと思います」

ハンデを持つ猫、後遺症が見られそうなほど傷ついた猫を目にした時、「お世話できるだろうか」「どう関わればいいのだろうか」との不安から、保護したり里親として名乗り出たりすることを躊躇する人は多いはずだ。

だが、同じようなハンデを持つ猫の日常に触れると、ハンデの見方、受け止め方が変わってくるもの。そういった意味でも、醤油くんのニャン生からは学ぶことが多い。

ハンデに向けられる視線が少しずつ変わり、世間一般で障害と呼ばれるものを持つ猫の譲渡も増えていき、どんな猫にも「可哀想」ではなく、「かわいい」の言葉がかけられる社会になってほしい。

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