ある日突然、予期せぬ形で猫との出会いが降ってくることはあるもの。owner_and_yuzuさんは梅雨の時期、用水路で溺れていた子猫を発見。「ゆず」と名付け、自宅に迎えることにしました。
側溝で溺れていた子猫を救出
昨年の6月、日中に徒歩で買い物に行った飼い主さんの耳に飛び込んできたのは、子猫の鳴き声。声の先は、前日の雨で水かさが増した側溝。覗き込むと、溺れかけている生後2〜3週間ほどの子猫がいました。
近くには母猫らしき猫を含めた数匹の猫が子猫を見ていたため、当初、飼い主さんは子猫を救出し。母猫たちのもとへ返そうと考えていました。
ところが、レスキューのため側溝へ近づくと、母猫たちは逃げていってしまい、ずぶ濡れで震える子猫が低体温症のように見えたため、自宅へ連れ帰ることに。
帰宅後、飼い主さんは子猫の身体を拭き、毛布や人肌で温めながら様子見。すると、子猫は夕方には元気に。安堵した飼い主さんはその後、動物病院へ連れて行き、寄生虫の検査などを受けました。
「元気になってからは、病院へ行く用のキャリーケースが居場所になっていました。まだ家に慣れきれていない様子でしたが、怒ったり引っ掻いたりはしない子でしたね」
育猫中、頭を抱えたのがミルクのあげ方。まだまだ母乳が必要な時期であったため、子猫用のミルクを数時間置きに与える必要がありました。
「でも、スポイトが近場でなかなか売ってなくて。スプーンで何とか飲んでもらっていました。市販のミルクより母乳のほうが栄養価や免疫力は高いと思いましたので、この先、大丈夫なのだろうか、と不安を感じました」
しかし、予想に反して、ゆずちゃんはスクスクと成長。飼い主さんはその姿を目にし、喜びを噛みしめました。
「ただ、ワクチンや避妊手術などの必要なケアを行っていく中で、涙の通り道が詰まってしまう『鼻涙管閉塞(流涙症)』であることが分かりました。目から涙がよく出たり、目ヤニが固まってしまったりする病気です。治らないので、ずっと付き合っていくしかないとの診断でした」
そこで、飼い主さんは目を拭くなどのケアを行い、ゆずちゃんが少しでも快適に暮らせるように日々、サポートしています。
「ゆずの話は、壮大な物語というわけではありません。けれど、少しでも消えゆきそうな命に手を差し伸べてくれる方が増えてくれることを願っています。ペットや野良犬猫の虐待がない世の中になってほしい」
か弱かった子猫がお転婆娘に変身!
側溝で消えかかっていた、ひとつの命は今や飼い主さんを笑顔にするお転婆娘に成長。
これまで共に過ごした中で、特に心に焼き付いているのは、自宅に迎えて半年ほど経った頃のエピソード。
子猫だったゆずちゃんは外を見たくて窓に登ろうと奮闘しましたが、上手く登ることができず…。しかし、諦められなかったゆずちゃんは窓枠にしがみついたまま、外を眺めるようになったのだとか。
「両前足で窓枠にしがみついてぶら下がり、後足で壁に踏ん張りをきかせていました。その姿が必死すぎて驚きました(笑)」
溢れんばかりの好奇心は、今も健在。自宅では毎朝、飼い主さんとゆずちゃんによるバナナの攻防戦が繰り広げられています。
「私は早朝に軽い朝食としてバナナを食べるのですが、皮の内側を舐めにきます。実を食べたい私と皮を舐めたいゆずの戦いです(笑)」
また、ゆずちゃんは天邪鬼な性格でもあるよう。
「甘えてくるので構うと、噛みつきや引っかきをしてきます。ベッドで寝る時は寄ってきませんが、朝方になると布団の中へ入ってきたり、足元で寝たりします。脚の上や股の間に居座られると、動けません(笑)」
ちなみに、お留守番の時はイタズラをせず、色んな場所で寝て過ごしているものの、飼い主さんが帰宅すると、泣き叫ぶように鳴き、甘えるのだとか。
「私が家にいると、イタズラし放題に変身しますが(笑)」
天真爛漫なゆずちゃんに振り回される日々を送る飼い主さんには、猫を迎えたことで起きた変化がたくさん。
「毛がよく抜けるので、人と猫のためにと思い、掃除をよくするようになりました。あと、猫の生態やご飯、病気などを調べるようになりました。そして、部屋が猫グッズでいっぱいになりましたね(笑)」
側溝でひっそり亡くなっていたかもしれなかった命は今日も、マイペースに生き、大切な人を笑わせています。